最新記事
若者

若者の現在と10年後の未来:消費行動編(後編)──新型コロナで変化が加速

2020年5月29日(金)12時10分
久我 尚子(ニッセイ基礎研究所)

なお、全体と若者について、現在と未来のあてはまる割合の差を比較したところ、いずれも大きな違いはないが、『貯蓄』志向で若者が全体をやや上回っている(+3.2%pt)。これは、繰り返し述べてきた通り3、若い世代ほど厳しい経済環境にあるために、将来の経済不安が強いことがあるのだろう。

おわりに──アフターコロナは消費行動の変化が一気に加速したところで始まる

新型コロナウィルスの感染拡大の終息が見えない中で、日本経済が受けるダメージの深さも長さも読めない状況だ。また、消費マインドは、そもそも昨年秋の消費増税の影響で、低水準にあったところに、追い打ちがかけられてしまった。

内閣府「消費動向調査」によると、2020年3月の消費者態度指数は30.9(前月▲7.4%pt)であり、東日本大震災直後の水準を下回った(図表7)。リーマンショック後の底(27.5)と比べれば、まだ高いようだが、この調査は毎月15日に実施されている。よって、3月の値は中旬のものだ。周知の通り、3月下旬から現在にかけて、日本の状況は急速に悪化している。事態の終息まではいかずとも、少なくとも収束が見えなければ、今後も悪化し続ける可能性が高いだろう。

Nissei200521_7.jpg

今回の打撃によって、予期せずして、近年、消費者で生じていた消費のデジタル化をはじめとした変化が加速するとともに、消費者が根強く持つ価値観も明確になった印象を受けている。

本稿で見た、『所有より利用』『ネット交流』『貯蓄』『環境配慮』といった志向は、何事もなくとも若者をはじめ幅広い消費者層に広がっていったものだろう。しかし、新型コロナによって、この流れが加速していると見ている。

外出が制限されることで、イエナカ消費やコミュニケーションのデジタル化が進み、今、動画配信やオンライン教室等のサブスク加入が増えていると聞く。デジタルサービスの利用にお金を費やすという面での『所有より利用4』志向や『ネット交流』志向は消費者の希望如何によらず一気に高まっているだろう。さらに、経済不安から『貯蓄』志向も高まっているであろうし、これまでも深刻な災害等が生じた後は、社会貢献意識が高まる傾向があり、これは『環境配慮』志向の高まりにもつながる。

――――――――――
3 久我尚子「求められる20~40歳代の経済基盤の安定化」ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2017/5/17)等
4 なお、『所有より利用』志向で今回の事態で加速しているのは、消費のデジタル化で、モノを買うよりもデジタルサービスの利用にお金を費やすという『モノよりサービス(コト)』とも重なる部分についてであり、モノを買うのではなくサブスクリプションサービスで借りるという面はリスク回避意識から、逆に見直しが図られている可能性がある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ住民の50%超が不公平な和平を懸念=世論

ワールド

北朝鮮、日米のミサイル共同生産合意を批判 「安保リ

ビジネス

相互関税「即時発効」と米政権、トランプ氏が2日発表

ビジネス

EQT、日本の不動産部門責任者にKKR幹部を任命
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中