若者の現在と10年後の未来:消費行動編(後編)──新型コロナで変化が加速
なお、全体と若者について、現在と未来のあてはまる割合の差を比較したところ、いずれも大きな違いはないが、『貯蓄』志向で若者が全体をやや上回っている(+3.2%pt)。これは、繰り返し述べてきた通り3、若い世代ほど厳しい経済環境にあるために、将来の経済不安が強いことがあるのだろう。
おわりに──アフターコロナは消費行動の変化が一気に加速したところで始まる
新型コロナウィルスの感染拡大の終息が見えない中で、日本経済が受けるダメージの深さも長さも読めない状況だ。また、消費マインドは、そもそも昨年秋の消費増税の影響で、低水準にあったところに、追い打ちがかけられてしまった。
内閣府「消費動向調査」によると、2020年3月の消費者態度指数は30.9(前月▲7.4%pt)であり、東日本大震災直後の水準を下回った(図表7)。リーマンショック後の底(27.5)と比べれば、まだ高いようだが、この調査は毎月15日に実施されている。よって、3月の値は中旬のものだ。周知の通り、3月下旬から現在にかけて、日本の状況は急速に悪化している。事態の終息まではいかずとも、少なくとも収束が見えなければ、今後も悪化し続ける可能性が高いだろう。
今回の打撃によって、予期せずして、近年、消費者で生じていた消費のデジタル化をはじめとした変化が加速するとともに、消費者が根強く持つ価値観も明確になった印象を受けている。
本稿で見た、『所有より利用』『ネット交流』『貯蓄』『環境配慮』といった志向は、何事もなくとも若者をはじめ幅広い消費者層に広がっていったものだろう。しかし、新型コロナによって、この流れが加速していると見ている。
外出が制限されることで、イエナカ消費やコミュニケーションのデジタル化が進み、今、動画配信やオンライン教室等のサブスク加入が増えていると聞く。デジタルサービスの利用にお金を費やすという面での『所有より利用4』志向や『ネット交流』志向は消費者の希望如何によらず一気に高まっているだろう。さらに、経済不安から『貯蓄』志向も高まっているであろうし、これまでも深刻な災害等が生じた後は、社会貢献意識が高まる傾向があり、これは『環境配慮』志向の高まりにもつながる。
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3 久我尚子「求められる20~40歳代の経済基盤の安定化」ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2017/5/17)等
4 なお、『所有より利用』志向で今回の事態で加速しているのは、消費のデジタル化で、モノを買うよりもデジタルサービスの利用にお金を費やすという『モノよりサービス(コト)』とも重なる部分についてであり、モノを買うのではなくサブスクリプションサービスで借りるという面はリスク回避意識から、逆に見直しが図られている可能性がある。