最新記事
若者

若者の現在と10年後の未来:消費行動編(後編)──新型コロナで変化が加速

2020年5月29日(金)12時10分
久我 尚子(ニッセイ基礎研究所)

なお、消費行動や情報収集行動については、現在と10年後の未来で同様の項目をたずねているものがある。これらにについて「あてはまる割合」を比較すると、全体では、消費行動については『所有より利用』志向(現在より+24.5%pt)、『環境配慮』志向(+18.5%pt)、『(老後のための)貯蓄』志向(+11.9%pt)で未来の選択割合が現在を10%pt以上上回る(図表6)。

Nissei200521_6.jpg

未来では著しく伸びている『所有より利用』志向は、現在のところ、主に若者で強く見られる傾向だが、今後は年齢を問わず幅広い消費者層に広がりそうだ。また、『環境配慮』志向の伸びについては、日常生活において環境問題を肌で感じる機会が増えていることがあげられる。近年、地球温暖化の影響等により、日本では猛暑や台風などの異常気象が増えている。また、今年7月からは脱プラスチックに向けてレジ袋が有料化される。そして、『貯蓄』志向については、昨年6月に公表された金融庁の報告書をきっかけに「老後資金2千万円不足問題」が大きな話題となったように、現役世代では少子高齢化による将来の社会保障不安が大きいことが背景にあるのだろう。さらに、現在、新型コロナによっては、将来どころか、目の前の雇用の先行き不透明感が増している。

一方で、もともと現在でも利用意向が過半数を占めて高い『キャッシュレス決済』志向は、未来も現在と大きな違いはない。また、『ネット通販』志向も+3.5%ptの伸びにとどまっている。ネット通販環境がさらに整備されても、何でもネット通販を利用するようになるのではなく、ネット通販に向いているモノと店舗で買うことが向いているモノがあるということだろう。

また、情報収集行動については『SNS』志向(+8.3%pt)や『ネット交流』志向(+5.3%pt)で未来が現在を+5%pt以上上回る。これらは、現在のところ、若者で強く見られる傾向だが、今後は幅広い消費者層へじわりと広がるのだろう。一方で、『マスメディア』志向は低下するわけではなく、現在と同程度を維持しており(たずね方の違いもあるために同程度という評価が妥当だろう)、現在と同様に10年後の影響も大きいようだ。

若者についても同様に、『所有より利用』志向(+23.2%pt)や『貯蓄』志向(+15.0%pt)、『環境配慮』志向(+14.7%pt)で未来が現在を10%pt以上上回る。また、情報収集行動については『SNS』志向(+6.5%pt)で未来が現在を+5%pt以上上回るが、『ネット交流』志向はもともと比較的高いためか、未来も現在と同程度である。そして、『マスメディア』志向も現在と同程度であり、今後ともSNSとマスメディアの共存は続きそうだ。この背景には、前述の通り、両者にはメディアとしての性質の違いがあり、若者はそれぞれに価値を感じていることがあるのだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

シカゴ連銀公表の米失業率、10月概算値は4.4% 

ワールド

米民主党ペロシ議員が政界引退へ 女性初の米下院議長

ビジネス

英中銀が金利据え置き、5対4の僅差 12月利下げの

ビジネス

ユーロ圏小売売上高、9月は前月比0.1%減 予想外
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの前に現れた「強力すぎるライバル」にSNS爆笑
  • 4
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 5
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 6
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 7
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 8
    ファン熱狂も「マジで削除して」と娘は赤面...マライ…
  • 9
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 10
    コメ価格5キロ4000円時代を容認? 鈴木農相の「減反…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中