年代別:認知症のリスクを減らすために注意すべき危険因子
HOW TO REDUCE YOUR RISKS OF DEMENTIA
諸々の生活習慣に加え、ゲームや読書といった活動も認知症リスクを減らすことができる ECLIPSE_IMAGES/ISTOCKPHOTO
<発症リスクには、老いてからの食事や運動だけでなく、学業成績や職業、余暇など人生が丸ごと関わっている。本誌特別編集ムック「世界の最新医療2020」より>
多くの人は認知症について考えることを避けたがる傾向がある。自分の生活の中でまだ出会ったことがない場合は特にそうだ。しかし、認知症は世界全体で毎年990万人が診断される病気だ。これは3.2秒に1人が認知症の宣告を受けている計算になる。
しかも、この数字は増えている。現在の患者数は約5000万人、2050年には1億3000万人を突破する見込みだ。
高齢者とされる65歳になるまで、行動を起こすのを控えなくていい。認知症はこれといった治療法が存在しないため、もっと早い段階で脳の健康を守る方法を考える必要がある。私の国カナダでは、1月はアルツハイマー病啓発月間だ。年齢と関係なく、このような機会を捉えて認知症のリスク低減の方法を学ぶことはとても重要だ。
私はベイクレスト・ロットマン研究所で、認知・健康・ライフスタイル上の老化の因子を研究している。どうすれば加齢に伴う認知症のリスクを低減できるかや、脳を健康に保つ方法を調べている。現在は認知症を予防するためのさまざまなタイプの認知トレーニングや、ライフスタイルへの医療介入の効果を調べる2つの臨床試験の被験者を募っているところだ。
認知症の危険因子には、私たちにはどうしようもないものが3つある。年齢、性別、そして遺伝だ。しかし、最近では私たちが注意を払うべき認知症の危険因子が幼年期、中年期、高齢期にそれぞれ存在することを示す証拠が増えている。私たち自身のためにも、子供たちの将来のためにも、この発見は重要な意味を持つ。
本題に入る前に、アルツハイマー病と認知症に関する一般的な認識の混乱について、はっきりさせておきたい。認知症とは記憶、注意力、言語、問題解決などの認知能力の低下が、日常生活に支障が出るほど深刻な状態を意味する用語だ。認知症はさまざまな病気によって引き起こされる可能性があり、そのうち最もよく見られるのがアルツハイマー病だ。
幼少期における危険因子
妊娠期間に比して低出生体重で生まれた子供は、その後に認知機能障害を経験する確率が平均よりおよそ2倍高い。