コロナ休校で孫育児... でも祖父母の健康に「孫疲れ」はメリットあり
TIRING BUT BENEFICIAL
好奇心いっぱいで能力にあふれた孫との触れ合いは祖父母にも刺激に FREEMIXER/ISTOCKPHOTO
<新型コロナウイルスによる休校や休園が長期化し、共働き夫婦の子供を預かる祖父母の「孫疲れ」が叫ばれだしたが......。「夫源(ふげん)病」の命名で話題を呼んだ石蔵文信医師が、孫育ての極意を語る。本誌「0歳からの教育 みんなで子育て」特集より>
もしかするとパパやママ以上にかわいがってくれて、好きなだけ甘やかしてくれる──乳幼児にとって、祖父母はなくてはならない存在だ。祖父母の育児参加は子供の愛着形成や多様な学びに役立ち、両親にとっては家計やキャリアの頼もしい助けになる。
では、祖父母にとっては? 孫と会うのはうれしい半面、体力的・経済的にきついし、自由な時間が奪われるなどとして、「孫疲れ」なる言葉も誕生するほど難しい問題かもしれない。
孫育児参加が祖父母にどう影響するのかについて、中高年のメンタルケアなどを専門にし、自身も4人の孫育てをしている大阪大学人間科学科招聘教授の石蔵文信医師に、本誌・高木由美子が話を聞いた。
――疲れることも多い孫育児だが、祖父母にとって良い影響はあるのか。
疲れるのは悪いことに思えるかもしれない。だが逆に、60歳以上の患者に多い一般的な悩みは、食欲が湧かない、睡眠がしっかり取れない、というもの。じっとしているばかりでは当然、食べる気も起きないし睡眠もそれほど必要にならない。
そうすると結局、食欲増進剤や睡眠薬などを服用し、さらに体調が悪くなったりする。孫と歩き、世話で疲れることによって、食事も睡眠もしっかり取れるというメリットがある。
――良い疲れ方をするためには、孫とどんな接し方をするのがいいのか。
子供が小さいうちは体を使う遊びが多いだろうが、祖父母が遊び方を提案しても、子供はそのとおりにはしないもの。子供に合わせて、呼ばれたら近くに行き、やってと言われたらやるという方法でいい。
悪い疲れ方は、子供に対してイライラすること。時間に追われて子供をせかし、イライラすることも多い働く世代の両親と違い、祖父母は時間に余裕があるのがメリットだ。時には子供の寄り道に付き合い、余裕を持って行動を見てやればいい。
――体力を使うのがいい?
追い掛けっこが大好きな子供に付き合うのは体力がいるが、それだけでなく頭も使う。孫育てが認知症の予防にもつながる可能性もある。
小さい子供はものすごい能力を持っている。視力も聴力も記憶力も優れているし、興味のあるものを見つければ追い付けないような速さで走り出す。たかが子供と考えず、一人の人間として接することは、祖父母にも刺激になる。