最新記事

健康

10年後の死亡率が最も低い睡眠時間は何時間か 日本人が知らない睡眠負債の恐怖

2019年2月25日(月)18時15分
西野精治 (スタンフォード大学医学部精神科教授 ) *東洋経済オンラインからの転載

睡眠不足が積み重なり、慢性化してしまうことで、睡眠負債に陥るのです。

日本で「睡眠負債」という言葉が流行語になるほど広まったのは、2017年にNHKの番組が取り上げたことがきっかけでしたが、睡眠研究に携わっている人たちは以前から使っていた言葉でした。

ただ、睡眠不足の累積を意味する比喩表現として用いていたので、睡眠負債の概念そのものを議論し、医学的に定義づけするようなことはあまり行われてきていません。そのため、睡眠負債についての認識は、研究者によって微妙にニュアンスが違うようなところもあります。

しかし、睡眠不足の蓄積が、がん、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、うつ病などの精神疾患、認知症など、さまざまな発症リスクを高めることが、各方面の研究結果から明らかになってきており、睡眠負債の増大に歯止めをかけなくてはいけないという共通認識は、研究者の間で非常に高まっています。

4週間におよぶ実験でわかったこと

デメント教授が睡眠負債について説明するときに、よく用いていた実験結果があります。1994年に行われた4週間におよぶ睡眠時間計測の実験です。

若く健康な8人の被験者に、毎日同じ時間にベッドに入り、好きなだけ眠ってもらいます。ルールとして、眠れても眠れなくても、必ず毎日14時間ベッドで横になっていることを課しました。そして4週間にわたっての睡眠時間の変移を調べたのです。

newsweek_20190225_172620.jpg

最も典型的な被験者の場合、実験前の平均睡眠時間は7.5時間でした。はたして睡眠時間はどう推移するのか。

実験初日は、ベッドにいなければいけないと決められた14時間のうち、13時間眠れた。2日目も、13時間近く眠れた。ところが、日を追うごとに睡眠時間は減少し、1週間ぐらいすると、ベッドに入っても4〜5時間は眠れないようになった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中