BTSメンバーの入隊を「最強兵器」に使っても、韓国軍が抱える問題は変わらない
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軍の根深い虐待文化もある。近年は、兵役中に過酷ないじめを受けた兵士が死亡したり、自殺したりする事件が相次ぎ、虐待を受けた兵士による銃乱射事件も起きた。
軍事独裁体制から民主化を果たして既に数十年がたつ韓国では、もはやこうした軍の文化は受け入れられず、世論の軍隊離れが進んできた。
少子高齢化は、この問題を一段と悪化させるだろう。韓国政府は19年、出生率の低下により、兵役従事者は向こう20年で半減するとの予測を示した。
兵士の待遇を大幅に改善へ
こうした構造的問題を抱える一方で、韓国軍は中国の軍事力増強と北朝鮮のミサイル能力向上に対処する必要性に迫られている。そこで文在寅(ムン・ジェイン)前大統領は18年、軍と民主主義体制との関係を見直す「国防改革2.0」を発表した。
その一環として、陸軍はより少ない人数で高度化を図り、兵士たちにとってより人間的な組織になることを目指すとともに、国民の信頼と支持を取り戻すために組織の説明責任と透明性を拡大しようとしている。
現在の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は、文の改革を引き継ぎ、23年度の国防予算では、下級兵士の給与を全面的に引き上げる方針を示した。これまでよりも月給が48%アップする兵士もいる。兵士の装備や軍病院が改善され、基地外での活動に対する手当も引き上げられるという。
陸軍は、兵士たちの食事を劇的に改善する計画も試行している。民間の栄養士を雇い、新鮮な食品を提供する「ホテルのような」カフェテリアを造るというのだ。
兵役を統括する兵務庁も今年1月、軍務の代わりに公共機関などに勤務する「社会服務要員(軍事には不適格と見なされ、代わりに公共サービスの役割を担う兵役者)」が、軍人としての医療保険を完全に受けられるようにすると発表した(従来は一部だった)。
世界の舞台におけるBTSの文化的、経済的、そして外交的影響力を考えると、メンバーが音楽活動を休止して兵役に就くことは、一見したところ、韓国政府にとって大きな損失に思える。だが、軍にとっては2つの側面で重要だ。