最新記事
日本社会

NHK大河、視聴率1位の主人公は? データが語る日本人の歴史偏愛っぷり

2023年4月3日(月)19時10分
本川 裕(統計探偵/統計データ分析家) *PRESIDENT Onlineからの転載

若者の中にはテレビを持たない層も増えており、そうした点も踏まえるとこうした視聴率の推移からは、国民の歴史好きに応える形で放映されているNHK大河ドラマへの関心はなお高いと結論づけられよう。むしろ、大河ドラマが国民のテレビ離れを抑止する最後の手段となっているとさえいえるかもしれない。

図表2には初回視聴率の推移も掲げ、初回と期間平均との視聴率の差を「期待はずれ度」として表示した。

これを見ると2006年の「功名が辻」や「篤姫」のように事前期待がそれほど高くなかったのに実際は堅調な視聴率を維持し、初回より期間平均の方が高視聴率になったケースもあるが、ほとんどは多かれ少なかれ期待はずれとなっている。2010年以降では2018年の「西郷どん」は期待があまり高くなかったせいか期待はずれ度は最低であり、逆に最大は「いだてん~東京オリムピック噺~」だった。

「どうする家康」の初回視聴率は15.4%と低かったが、今後はどうなるだろうか。今のところ、期待を大きく裏切る視聴率の上昇は見込めなさそうである。

生きている歴史:日本各地で活動を続ける老舗企業

日本人の歴史好きは、実は、単なる趣味的な嗜好ではなく、そこには運命的な背景が隠れている。というのも、日本人にとって歴史は単なる過去の歴史ではなく、現在の生活の一部であるという側面が、海外の諸国民と比べて大きいからである。

聖徳太子にせよ、鎌倉幕府にせよ、天台密教にせよ、徳川家康にせよ、西郷隆盛にせよ、何らか現代に生きるわれわれの一部分を思い起こさせるのである。

植物学者・生態史家の中尾佐助は建築様式や食生活を例に挙げて日本が古代の習慣や文化を今に伝えている稀有な国であると述べている。

建築様式については、雨が多くじめじめした気候の日本や中国南部では高床式建築が合理的である。中国の江南では華北文化の影響で土間を基本とする建築に変わってしまったのに対して、日本ではもともと土間だった寺院までむしろ高床式に変化した。

また、食生活については、肉食を禁ずる仏教が優勢となった東アジア文明圏の中で古代から引き継いで基本的には肉食に復帰することなく、それを前提に肉の代わりとなるうま味を工夫し続けて、独自な日本料理を創出した点でも大陸諸国とは大きく異なっている。

みそ・しょうゆ、すし、だしなどの和食要素を生み出すとともに、その延長線上で海外から受け入れたラーメンやカレーなども新和食としてつくりかえ、それらが世界でも評判となっているのである。

島国であったため大陸国のように支配民族の大交代が起きなかった点から生じたこうした日本の歴史的独自性について中尾は次のようにまとめている。

<日本歴史では、社会も政治も、生活もいろいろ変化変遷してきた。しかしその変わりは全部連続性の上に構築されてきたという、世界歴史の上に、たぶん唯一の歴史になっているといってよいだろう。それは現在の社会に何をもたらしたのか。たぶんそれは古代の遺風、遺物を消し去ることなく、細ぼそとして、あるいは変化しながら、日本の国内のどこかに残してきたという効果を生じていると考えられる>(中尾佐助『現代文明ふたつの源流 照葉樹林文化・硬葉樹林文化』朝日選書、1978年、p.226~227)。

こうした点は、世界の中でめずらしいことに人間が手を加える前の原始林を「鎮守の森」として残してきているところにもあらわれているが、古くから続いてきた日本各地の老舗企業の存在にもじかに感じ取ることができる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

エリオット、LSEG株大量取得か 経営改善へ協議と

ビジネス

中国1月自動車販売19.5%減、約2年ぶり減少幅 

ワールド

米下院、トランプ関税への異議申し立て禁止規定を否決

ビジネス

深セン市政府、中国万科向けに116億ドルの救済策策
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 4
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 5
    崖が住居の目の前まで迫り、住宅が傾く...シチリア島…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本の…
  • 8
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 9
    衆院選で吹き荒れた「サナエ旋風」を海外有識者たち…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 5
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 8
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中