最新記事

映画

ついにスパイダーマンの世界に殴り込み? 『ヴェノム』最新作が示す「宇宙」の未来

MCU: Let There Be Change

2021年12月2日(木)17時07分
ジュリア・アレクサンダー

211207P58_VNM_02.jpg

©2021 CTMG. ©& TM 2021 MARVEL. ALL RIGHTS RESERVED.

ヴェノムが『ノー・ウェイ・ホーム』に登場することは、純粋な権利関係では可能だ。しかし、ヴェノムのようにソニー・ピクチャーズエンタテインメントが所有するキャラクターが、ソニーが出資していないマーベル映画のヒーローたちと本当に共演できるのか。スパイダーマンの権利はソニーが所有しているが、『ノー・ウェイ・ホーム』はウォルト・ディズニー傘下のMCUのシリーズだ。

そろそろ頭が混乱してきたかもしれない。実際、事はかなり複雑だ。

マーベル破産後に起きた複雑な変化

1990年代後半、マーベル・コミックスが破産を申請。その直後、ソニーはマーベルのほぼ全てのキャラクターの映像化権を購入する機会があったが、スパイダーマンだけを700万ドルで買い取った。X-メンとファンタスティック・フォーは20世紀フォックス(現・20世紀スタジオ)が獲得し、アイアンマンはあちこちを転々として、ハルクはユニバーサル・スタジオが捕獲した。

ウォルト・ディズニーは2009年にマーベルを、19年に20世紀フォックスを買収。マーベルが生んだキャラクターの権利は大半がディズニーに帰属して、大規模なユニバースの展開が可能になった。

ただし、ソニーは今のところ、スパイダーマンをマーベルに売り戻すつもりはなさそうだ。02~07年にサム・ライミ監督がソニーで製作したマグワイア主演のオリジナル3部作は、超大作のスーパーヒーロー映画ブームの先駆けとなった。

ソニーは同様の成功を目指し、12年にガーフィールド主演の『アメイジング・スパイダーマン』を公開。14年の続編と2作合わせて興行収入は約14億6000万ドルと悪い数字ではないが、オリジナル3部作には及ばなかった。

理由の1つは、スーパーヒーローというジャンルが発展するなかで、ファンが求めるものが変わっていったこと。お気に入りのスーパーヒーローたちが物語の枠を超えて交流し、1つの大きなユニバースで活躍してほしいという期待が高まったのだ。

17年にソニーとマーベルは前例のない契約を結んだ。ホランドの「スパイダーマン」最新シリーズは、製作に関する権利をマーベルが、グッズの権利をディズニーが持ち、ソニーは映画の資金を調達して興行収入をほぼ100%得ることになった。さらに、マーベルは「アベンジャーズ」などスーパーヒーローがチームを組むユニバースに、スパイダーマンを起用できるようになった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ブラジル前大統領の刑期短縮法案、上院も可決 ルラ氏

ワールド

米、新たな対ロ制裁準備 プーチン氏が和平合意拒否な

ワールド

ロシア産ナフサ、トランプ氏のタンカー封鎖命令で対ベ

ビジネス

EXCLUSIVE-FRB、シティへの改善勧告を解
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中