デーブ・スペクター「日本がオリンピックを美化するのはテレビのせい」

2020年3月28日(土)20時00分
小暮聡子(本誌記者)

――日本では、逆にオリンピック選手が国民に対して「応援してくれて有難うございました」とお礼を述べたりするようなところもある。アメリカではそういうことはないのか。

サポートしてくれた人に対してはあるかもしれない。日本の場合も、本当は「自分が努力したからメダルが取れた」と言ってほしい(笑)。上から目線で言ってほしい。

(2004年アテネ五輪の100メートル平泳ぎで優勝した)北島康介の「ちょー気持ちいい」は、珍しく用意していない本音を言っちゃって、すごく良かった。語録として哲学があるというわけではないが、いい子にしようとしてないところが良かった。

(92年バルセロナ五輪競泳女子200メートル平泳ぎに出場した)岩崎恭子が、14歳で金メダルをとって「今まで生きてきた中で一番幸せです」って言ったのは、そりゃあ14年しか生きてないからそうだろとツッコミたくなるが、あれがよかった(笑)。計算していないから。言われてみればまだ14歳だもんね、って。あれは最高だった。

こういう予定調和ではない面白いコメントを言うアマチュアスポーツ選手もいるが、テレビに出ているアマチュア選手はほとんどが優等生ぶっていて面白くない。

――アマチュア選手がタレント化するのは日本特有の現象なのか。

アメリカでも、メダリストがスポーツドリンクなどのCMには出ることはある。もちろん一部には、スポーツ解説員になる人もいる。でも、日本はアスリートがタレント化しやすい。

その上、コメントが優等生ぶっていて面白くない......。「自分らしく走りたいと思います」って、なんだよ自分らしくって。そんなの当たり前じゃん、転ぶのか?って。コメントが死ぬほどつまらない。

プロ野球選手は面白い。(ヤクルトの故・)野村(克也)監督とか、(近鉄バファローズなどの)金村(義明)とか。でもアマチュアスポーツになると、急に美しい美談になっちゃう。元女子サッカー選手の丸山桂里奈は別格に面白いが!

でも日本ではつまらなくても食べていける。周りがよいしょするから。オリンピック選手は政治家になるかもしれないくらい、よいしょされている。優勝したり活躍した人に、例えば「桜を見る会」などで会ったりするともちろんトキメキはあるけど(笑)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中