最新記事

映画

ネット時代に生き残りかける映画館 料金細分化の韓国と格安定額制のアメリカ

2018年5月2日(水)18時26分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

観客はNetflixなどから映画館に戻ってくるか?  Krists Luhaers on Unsplash

<映画業界では劇場の高級化によって集客アップと入場料アップを図るというのが主流だが、一部ではまったく違う発想も出てきた──>

あなたは映画館でSF映画やスペクタクル映画を見ている時、「今、この天井が落ちてきたらどうしよう......」などという想像をしたことはないだろうか? それが韓国のある映画館で現実に起きた。

4月7日韓国・京畿道にある廣州CGVの上映中の映画館の天井が12枚落ちてくるという事件が起こった。映画を観覧していた観客11人が軽傷を負い病院で手当てを受けた。落ちてきたのは60センチ×110センチの天井部分で、厚さが5mmで軽かったため大きな負傷者は出なかったものの、この映画館がたった6か月前にオープンしたばかりのCGVの映画館だったことに注目が集まった。

この事故に対し、CGV関係者は「韓国国内の物価上昇に伴い、家賃と管理費も値上がりしており、施設投資に使われる費用も継続して増加している状態。負担が大きかった」と訴えた。折しもCGVは映画料金の1,000ウォン(=約102円)の値上げを発表しており、この事故の4日後の4月11日から値上げされた料金で映画チケットを発売。韓国国内では「映画1万ウォン時代突入」と大きく報道されることとなった。しかし、事故直後のタイミングで値上げすることにCGVへの批判が集中した。


廣州CGVの天井崩落事故を伝える韓国のニュースMBCNEWS / YouTube


韓国の映画事情

CGVは韓国でトップシェアを誇るシネマコンプレックスチェーンである。その後をロッテシネマとメガボックスの2社が追いかけるという状況だ。今までに何度か料金の値上げはあったが、いつもまずCGVが発表し、その後に2社も続いて値上げするというパターンだった。今回も例外なく19日にはロッテが、そして27日からはメガボックスも各1,000ウォンの値上げをした。筆者が韓国に住み始めた2000年には6,000ウォンだった映画料金だが、この18年の間に4,000ウォン、率にして60%もアップしてしまった。

前回のCGVの値上げは2年前の2016年に行われた。しかし、この値上げスタイルがなんとも不思議で今までの方法とは違っていたため消費者を混乱させることとなった。その仕組みとは、館内での座席の位置別で価格を決めるというもので、最前列や通路側など見づらい席と、真ん中の良い席との差別化を図ったもので、場所により細かく価格設定されている。発表当時、窓口で買うよりも自動券売機やネット予約の利用が多い韓国では分かりにくいと不満が集中した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、8月下旬から少なくとも8200万ドルの

ビジネス

クーグラー元FRB理事、辞任前に倫理規定に抵触する

ビジネス

米ヘッジファンド、7─9月期にマグニフィセント7へ

ワールド

アングル:気候変動で加速する浸食被害、バングラ住民
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中