教職員や卒業生の子供が「合格しやすい」のは本当?
従って、「枠」があるにしても、最近では「合否のボーダーラインに乗った場合だけ優遇する」とか、「アーリーで出してきた場合は、レガシーの学生はいきなりリジェクト(不合格)にはせず、合格でなくてもディファード(補欠)にしておく」という程度の優遇にとどめている大学も多いようです。
(中略)
こうした考え方の一方で、アメリカの大学は学生全員に「伝統の継承者」となることは期待はしていないということがあります。
例えば、大学にもよりますが「新任教授の選考にあたっては、できるだけその大学で博士号を取った人物以外から採用する」ということが建前になっています。つまり、その大学の出身者だけで学問の伝統を引き継いでいては「停滞に陥る」危険、そしてその結果として「競争に負ける」危険があるからです。
学部学生の入試でも同様で、伝統の継承者と破壊者の双方でうまくバランスを取って合格を出していくということをするようです。
では「伝統の破壊者」とは何かですが、私立の名門大学の場合はどちらかと言えば「レギュラー出願の願書の中で探していく」ことになると言われています。つまり、12月末に出願を締め切ってから3月末の合否発表まで3カ月をかけて、すべての願書を審査する中で「伝統の破壊者」をできるだけ拾うようにするというのです。
その「破壊者」ですが、文字通り「政府批判の好きな政治好きの若者」であるとか「前衛芸術のクリエーター」あるいは「先端科学への夢追い人」などといったタイプも歓迎されますが、そうした「目に見えて伝統破壊をやりそうな人物」というのは18歳の時点ではそうは願書の中から浮かび上がってはこないでしょう。
また、そうした種類の人物ばかりをあまりたくさん合格させて、アーリーで合格させた「伝統の継承者」と合わせて新入生のグループを形成しても、それが大学として最善の選択だという保証はありません。
そこで、多くの大学の場合は「伝統の維持と破壊」を意識して、大学の歴史を先へ進めるために何をやっているかというと、まずは多様な人材を確保するということになるわけです。
※第6回:公立校もアイビーも「ほぼ男女同数」が合格・入学する はこちら