アメリカの女子大には「上昇志向の強い」女性が集まる
むしろ、社会に残っている女性への差別や偏見と「戦う姿勢」を持った学生が多く、各大学の誇る同窓会組織なども利用しながら、社会的には「より上昇志向の強い」学生が集う場所だというイメージの方が実情の説明としては合っているようです。
ヒラリー・クリントン氏がウェルズリーの卒業生(院はイェールの法科大学院)というのも、決して偶然ではないですし、彼女がウェルズリーに在学していた際にベトナム反戦運動に積極的に参加していたというのも、アメリカの「女子大カルチャー」としては例外ではなく、むしろ本流に属すると見るべきです。
幕末の戊辰戦争の際に、会津藩士の娘として官軍と戦った後に単身アメリカに留学した山川捨松という女性がありました。彼女はヴァッサーに入学して、優秀な成績で卒業しています。日本女性として、アメリカの学士号取得第1号は彼女です。
帰国後の山川捨松は、やがて陸軍のリーダーとして日露戦争の指導をする大山巌の妻となりますが、今でもヴァッサー・カレッジのホームページには山川のエピソードが掲載されています。今に語り継がれているイメージは、大山元帥夫人としての彼女というよりも、会津で奮戦した女傑という伝説であり、それもまたアメリカの「女子大カルチャー」というわけです。
ハイレベル教育を志向する公立大学
次に名門大学に比肩する教育を行っている大学群として、「公立大学に附設されたオナーズ・カレッジ(Honors College)」という存在があります。
東海岸で言えば、ペンシルベニア州のペンシルベニア州立大学(通称「ペンステート」The Pennsylvania State University)、ニュージャージー州のラトガース大学(Rutgers University)、中部ミシガン州のミシガン大学(University of Michigan)などは、大規模な公立大学として有名であり、卒業生は全米の各方面で活躍しています。
こうした大学は、ともすれば優秀な学生にとっては「名門私大の滑り止め」という位置づけ、つまり併願時の「セーフ・スクール(安心して合格できる大学)」というイメージになっていました。つまり、優秀な学生の獲得競争では遅れを取っていたのです。
そこで各校は、通常の各学部学科とは異なる「優秀な学生の在籍するカレッジ」として「オナーズ・カレッジ(特待生の在籍学科)」というものを設けるようになりました。
この「オナーズ・カレッジ」ですが、出願は通常どおり母体の州立大学へ行います。その際に、「オナーズ・カレッジ」への入学希望がある場合は、その旨を届け出るというシステムになっている大学もありますし、その場合には追加のエッセイを提出しなくてはならないということもあります。
そして、出願者の中から、あるいは出願者中の希望者の中から選抜する形で、特に成績優秀な学生には「オナーズ・カレッジ」入学が許可されるという仕組みとなっています。
※第4回:米大学がいちばん欲しいのは「専攻が決まっている学生」 はこちら