だから、もう「お金」は必要ない
外部から資金調達を行う起業家の場合、ビジネスの立ち上げ時には、時間と労力の8割をお金の問題につぎ込んでいるはずである。この部分を本業に回すことができれば、どれだけスムーズに事業を立ち上げることができるだろうか。
新しい資本の時代には、お金をかけず、自分の身ひとつで事業をスタートできる。ダメでも、また別な形でチャレンジすればよいので、成功の確率も上がってくるはずだ。すべての時間を事業に費やせない副業の起業家にとっては最高の環境といってよいだろう。
もうひとつの革命は、経済全体として資本の役割が低下することである。
先ほどは、マクロ経済の中で、資本というものがどれだけ大きな役割を果たしているのかについて解説した。大きな初期投資を必要としないビジネスが増えてくれば、社会全体として必要な投資額は減ってくることになる。新しいネット時代においては、資本もしくは資本家の役割は相対的に低下するかもしれない。
そうなってくると、経済全体としてのお金の動きが大きく変わってくる可能性があるのだ。
市場はすでに、この状況を織り込み始めている
今、グローバル経済の分野では、慢性的な低金利にどう対処したらよいのか、様々な議論が行われている。
長期金利は、最終的にはその経済圏の成長率と同じ水準に収束してくることが知られている。全世界的に金利が低い状態が続いているということは、市場は、世界経済についてあまり成長しないと予想していることになる。だが、金利というのは、それだけの要因で決まるものではない。金利はお金を貸し借りする時の利子であり、お金が余っている時には低くなり、お金が足りない時には高くなるという性質もある。
この原稿を書いている時点において、アメリカを除く各国は量的緩和策を継続しており、世の中は大量のマネーで溢れかえっている。これが低金利に拍車をかけている可能性は高い。しかし、各国の金利があまり上がらないのはそれだけが原因ではないかもしれない。
市場は、近い将来、それほど多くの資本を必要としなくなる社会が到来することを察知しており、すでにそれを織り込み始めているかもしれないのだ。投資額の減少によって資本が余ることが予想され、それが低金利を引き起こしている可能性がある。
世界的な貿易の動向にも少し異変が生じている。
基本的に全世界のGDP(国内総生産)と貿易量(各国の輸出と輸入の総額)は比例しているのだが、このところGDPの成長率に対して、貿易量が相対的に減少している。過去にも同じような局面が何度かあったので、大した意味はない可能性もある。
だが、先ほどの投資減少と低金利に関する話題と同様、同じ経済規模を維持するのに従来のような物的資源を必要としなくなっており、これが貿易量の相対的な低下につながっている可能性は否定できない。