最新記事

ネット

素人「追悼文」の名作が読みたい!

一般人をしのぶ死亡記事や故人の別れのメッセージがブームに

2015年10月5日(月)17時30分
ルース・グラハム

葬儀社サイトも 追悼文サイトに月間2400万件もアクセスがくる「魅力」とは Erik Dreyer-The Image Bank/GETTY IMAGES(COMPUTER), FCAFOTODIGITAL/iStockphoto(SCREEN INSET)

 普通の主婦だった高齢女性が死んでも、近所の人や親族にしか訃報は伝わらない──そんな常識はもう通用しないようだ。

 例えば先月に104歳で亡くなったドロシー・マッケルハニー。本人が書いた別れの言葉がバージニア州の地元紙の公式サイトに掲載されると、ほろりとする文章だと評判を呼び、フェイスブックやツイッターを通じて一気に広まった。

「あなたがこれを読むときには、私はもうこの世に存在しません」──そんな言葉で始まるメッセージには、少女時代の思い出がつづられ、ちょっとした人生訓も添えられている。「自分の気持ちに正直に、素晴らしい人生を送ってね。ああ、それから、いつも笑顔を忘れずに」

 かつては無名の人が亡くなっても、せいぜい遺族が地元紙に短い死亡広告を出すだけだった。今では地方紙や葬儀社のサイトなど、故人からのメッセージや長文の追悼文を公開できる場がいくらでもある。民間の追悼サイト「レガシー・ドット・コム」は月間2400万件のアクセスを誇り、「笑える追悼文」コーナーまである。おかげで素人ライターが腕を振るって死亡記事を書くようになった。

 昨年11月に35歳で亡くなったアーロン・パーモットは妻と共に書いた別れの言葉で、自分をスパイダーマンに例えた。「私は放射能を浴びたクモにかまれ......われわれの社会を脅かす癌という名の凶悪犯と1年に及ぶバトルを繰り広げた」

 このようにユーモアも交え、当事者の率直な思いをつづり、ささやかな人生訓を織り交ぜたメッセージは、見ず知らずの他人までしんみりとさせる。

 もっとも、人気を呼ぶのは遊び心あふれる文章だけではない。7月にメーン州の地方紙サイトに投稿されたコリーン・シンガーの追悼文には、執筆者の怒りが込められている。記事には、薬物依存症のため32歳で亡くなったシンガーは「自分自身と(州知事の)政治、社会全体の精神疾患に対する無知と無関心、愚かしい薬物依存対策の犠牲者だ」と書かれている。

 執筆者は深い哀悼を表す一方で、死者をむち打つこともいとわない。「コリーンはとても慈悲深く、自分よりも不運な人には惜しみなく手を差し伸べた。その一方で、彼女は詐欺師、泥棒、嘘つきでもあった」

 投稿時には匿名だったが、その後シンガーの元夫が執筆者として名乗り出た。いい面も含め、彼女の複雑な実像を伝えたかったと、彼は言う。「彼女のことをただのヤク中と思ってほしくなかった」

 死亡記事で彼が怒りをぶつけた相手は、共和党の州知事だ。知事が医療難民の実情に無理解だから、貧しい依存症患者は治療を受けられないというのだ。

 もっとあからさまに政治的なメッセージを打ち出したものもある。先月亡くなったエレーン・フィドライクは「エレーンからのお願い」として、「花束は要らないから、ヒラリー・クリントンには投票しないで」と訴えるメッセージを残した。

パクリ記事にご用心!

 驚くことに、故人の「悪事」を暴くものまである。バル・パターソンは、自身が書いたメッセージで学歴詐称を告白した。「(ユタ大学で)学生ローンの支払いに行ったら、事務の女の子が僕の書類を間違えて別のケースに入れた。2週間後、博士号の証書が郵送されてきた。おかげでいきなりドクターさ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ペイペイ、米IPO価格は仮条件下限付近に 中東情勢

ワールド

IEA、過去最大の石油備蓄放出を提案 WSJ報道

ワールド

原油先物下落、IEAが過去最大の石油備蓄放出を提案

ビジネス

米シティ、第1四半期の投資銀行と市場収入は10%台
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開された皇太子夫妻の写真が話題に
  • 4
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目…
  • 5
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 6
    人間ダンサーを連れて「圧巻のパフォーマンス」...こ…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 9
    身長や外見も審査され、軍隊並みの訓練を受ける...中…
  • 10
    イランがドバイ国際空港にドローン攻撃...爆発の瞬間…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中