ママたちの不安を知る、型破りな保育園経営者(1/3)
たとえば不要なクレームを避けるため、事前にいっさいの責任が親にあることを押しつけられます。入園前に、子どもがトイレでひとりで用を足せるよう教えなければなりません。自分でできることは自分でやる。もしできなければ、その子は家庭できちんとした教育を受けていないと思われます。
おもらししたまま、ママの迎えを待っているなんてかわいそうなことですが、それも母親への教育なのでしょう。でもママとしては、先生は何をしているのか、どうしてうちの子をずっと座らせていたのか、と疑問に思う。保育園の先生はそれには触れず、子どもに基本的なことを教えていないと母親を責め、自宅でもっとトイレ・トレーニングをするようにといいます。要するに、責任を親に押しつけているのです。
私はその時も感情的になって区役所へ行き、不満をぶちまけましたが、いまではよくわかります。先生としては、どの子も命です。子どもは生タマゴのようなもので、ちょっと当てるとすぐに壊れる。どんなことでも起こり得ます。このような不要なもめごとを避けるため、まずは親を教育し、親自身に至らなかったことを理解させる。このようにすれば保育者への責任追及が難しくなるのです。
日本での子育ては、なんて大変なのかと思いました。手助けしてくれる肉親も友だちもいない私は、育児の悩みを夫にまき散らしました。初めは日本語が話せなかったので、夫もさほど理解できず、私のしかめっ面と興奮状態を目にするだけでした。家族を養うために日々働いて疲れているのに、帰宅してからも妻のにこやかな顔が見られない。彼もうんざりしていました。こうして私たち夫婦の間も、冷めていったのでした。
夫婦関係が悪くなると、自分の精神的なプレッシャーもより大きくなりました。出産してからの1年間で13キロもやせてしまい、髪の毛も3分の1が抜け落ちました。食事ものどを通りません。栄養失調になり、自分はがんなのかと疑いましたが、実際にはうつ病でした。
毎日、息子を連れて公園へ行き、ほかの子が楽しそうなのを目にすると、涙があふれ出しました。すると息子は自分が何か悪いことをしたかと思い、「いい子にするから、ママ泣かないで」などといいます。そのたびにますます心を痛めました。
しかも日本の育児環境は、中国と異なります。中国だったら、親切で世話好きの人が多く、子どもを抱いた若いママが泣いていると「何を気にしているの?」「できることはある?」などと誰かが声をかけてくれます。一方、日本では、気にとめる人は少ない。自分の子に「あっちへ行ってなさい」といい、私たち親子から離れていくようなママもいました。実際、私は公園で1カ月ほど泣いていましたが、1人も声をかけてくれなかったのです。
息子は公園で遊ばなくなり、私にくっついて離れなくなりました。ママを見失うのではと不安を覚えたのでしょう。でも子どもがピッタリくっつくほどに、私の気持ちはへこみました。負のスパイラルに陥っていたのです。
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