「YouTubeで調べてもいいのでしょうか?」...池上彰が説く、デジタル時代に子供に「教養」を身につけさせる方法とは
「日本経済崩壊」の動画で将来を悲観する大学生
YouTubeなどの動画サイトは、何かを知りたい時に手軽で便利です。ただ、こうした動画が玉石混交であることはよく知られています。
特に個人が発信しているものは、偏った考えや間違った情報を流しているケースがありますし、意図的にフェイク情報を流しているものも散見されます。
ある大学生に、「日本経済はもうダメです」と言われたことがあります。なぜそう思うのか尋ねると「日本中の経営者がどんどんドバイに逃げ出しているそうです。
「YouTubeでその現実を知りました」と言う。「じゃあ、日本中のたくさんの会社は誰が経営しているの?」と聞くと、アレッ? という顔をするわけです。
確かに、ドバイに逃げた経営者はいるでしょう。でもそれは、日本経済に大ダメージを与えるような数ではない。情報源がYouTubeだけだと、そこに思いが至りにくいのです。
何かを視聴するとそれに関連する動画が次々に紹介されるので、自分の興味や考えがどんどん補強され、別の意見が見えにくくなるのも一因かもしれません。
複数のソースから情報を手に入れる習慣づけを
これからの社会を生きる子どもたちは否応なくデジタル情報と関わりますから、動画やインターネットに触れてネットリテラシーを身につけることもまた、大切な学びです。
そのリテラシーのひとつとして、正しい情報を手に入れるには手間がかかるのだということを、ぜひ伝えてほしいと思います。
何かを知りたい時に、とりあえずYouTubeやTwitter、Instagramで「ああ、そういうことか」となるのはいいのです。問題は、とんでもない間違いかもしれないのに、それをそのまま信じ込んでしまうことです。
何となくこういうことと知った上で、他の方法でも調べてみる。別のサイトに目を通してみる。関連する本を読む。詳しい人に話を聞く。そういう手間をかけないと、正しい情報はなかなか手に入りません。