最新記事

メンタルヘルス

怒りは自分を守る盾。「怒れない人」にこそ必要なアンガーマネジメントの極意

2022年7月13日(水)11時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
怒れない人

Metamorworks-iStock.

<世間の「アンガーマネジメント」に対するイメージは間違い。怒れない人は、上手な怒り方を身につけたほうがいい>

「アンガーマネジメント」という言葉はすでに市民権を得ているが、怒りっぽい人に必要なもの、頭にすぐ血がのぼってしまう人が自分の怒りを抑えるためのもの、というイメージがある。それは大きな誤解だ。

日本アンガーマネジメント協会のウェブサイトには、こう書かれている。

「アンガーマネジメントは怒らないことを目指すものではありません。違いを受け入れ、人間関係を良くする心理トレーニングです」

つまり、「怒りと上手に付き合うメソッド」であり、一般的なイメージとは逆に、うまく怒れない人にも役立つものなのだ。

怒れないことが原因で、他人から軽んじられたり、仕事を押し付けられたり、約束を破られたり......と、損をしていると感じる人は多いのではないだろうか。

そんな悩みを抱える人のために、アンガーマネジメントの日本の第一人者である安藤俊介氏(日本アンガーマネジメント協会代表理事)が、かつてない本を出版した。『タイプ別 怒れない私のためのきちんと怒る練習帳』(CCCメディアハウス)だ。

怒れない人を6つのタイプに分類し、心の「モヤモヤ」を正しく理解できるように手ほどき。そして、「人と比べられたら」「マウントをとられたら」「すぐに謝っちゃうときは」など、34のケース別に「怒り方」の選択肢を提示してくれる。

安藤氏は言う。「怒りは、自分の大切なものを守るためにある感情」「上手な怒り方は、自分を守る盾になる」

本書から3回に分け、抜粋する(今回は第1回)。

◇ ◇ ◇

「怒れない人」にアンガーマネジメントは必要?

「自分はどちらかと言えばはっきりと怒れない方なのに、アンガーマネジメントが必要なの?」と思われるかもしれません。アンガーマネジメントを「怒らなくなるための方法」だと思っている人がいますが、それは誤解です。

アンガーマネジメントは、「怒る必要のあることには上手に怒り、怒る必要のないことには怒らなくて済むようになること」を目指すものです。1970年代にアメリカで生まれた、怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングなのです。

「上手に付き合う」とは、「怒りの感情で後悔をしない」ことです。私たちは怒っても後悔しますし、怒らなくても後悔します。「怒って後悔」とは、あんな風に怒らなければよかったという後悔。「怒らなくて後悔」とは、やっぱりあの時怒っておけばよかったという後悔です。

怒ることが苦手なあなたは、怒れずに後悔をすることが多いのではないでしょうか。また、モヤモヤして「この気持ちをどうすればいいのだろう」と解決策を見つけられずにいるのではないでしょうか。もしそうであれば、怒りと上手に付き合えているとは言えませんので、アンガーマネジメントが必要です。

アンガーマネジメントに取り組んだ私は、アンガーマネジメントできることの一番のメリットは、自分と違うものへの受容度が上がることだと考えています。自分と違うものを受け入れられるようになると、どんな人の考え・意見を聞いても、そこに衝突や軋轢は生まれません。自分と違うことは悪いことではないですし、ましてや敵でもありません。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナジブ・マレーシア元首相、1MDB汚職事件で全25

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏と28日会談 領土など和

ワールド

ロシア高官、和平案巡り米側と接触 協議継続へ=大統

ワールド

前大統領に懲役10年求刑、非常戒厳後の捜査妨害など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 5
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 6
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 7
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中