最新記事

キャリア

篠原ともえ、夫婦で起業し40代でデザイナーへ転身 持続可能なものづくり掲げ国際的広告賞で2冠

2022年7月30日(土)11時50分
池田鉄平(ライター・編集者) *東洋経済オンラインからの転載

篠原ともえがデザインした革製の着物

Photography: Sayuki Inoue ©︎TANNERS' COUNCIL OF JAPAN

作品は一般社団法人「日本タンナーズ協会」によって日本の革産業・文化を広く発信するために立ち上げられたプロジェクトの一環で制作。本来廃棄される革の端の曲線を動物たちが暮らす山容に見立て、グラデーションで表現し生地を無駄なく使う日本の伝統衣装、着物に仕立てた。

「日本の天然革の1300年近い美しい歴史をどのような作品にしたら伝わるのかを自分たちで考えて提案しています。同時に伝統の橋渡しをすることも、私たちデザイナーの責務だと思っています」

あの篠原ともえが国際的な賞を受賞したという快挙が、大きくクローズアップされがちだが、そこに至るまでの背景やチームとしての舞台裏を語ってくれた。

「当初は私がインフルエンサーとして出演し日本皮革についてPRするといった企画だったのですが、『素晴らしい技術をおもちの職人さん方に光を当てたプロジェクトにしたほうがきっといいと思います』って説得をしたんです。

そこから最初のオファーではジュエリーを作り、次は着物を手がけ、そして広告賞にエントリーさせていただきました。今回の受賞は私たちにとって、2年かけて丁寧にディレクションしてきたプロジェクトが育まれ、花を咲かせることを実感できた体験でしたね」

「簡単に人生が軽やかに進んできたわけではない」

シノラーブームを巻き起こし一世を風靡したのは今から20年以上前、現在、篠原ともえも43歳となった。歌手・タレントとして活動した後、デザイナーに転向し国際的な賞も受賞。そんな自身のキャリアは、ジェンダーレス社会を目指す動きが大きくなっている時代においても、ひとつの成功モデルだろう。

だからこそ、自分を信じて40代でのキャリアチェンジに成功した秘訣を尋ねてみた。

「これまでの道のりは決して簡単に進んできたわけではないんです。歌手の時代は、人生を懸けて真摯に挑んで、たくさんの方に認知していただきましたが、シンガーソングライターとしてクリエートしても、永遠に歌い継がれる曲を自分自身で創作できているのだろうかと葛藤がありました。お芝居のお仕事をしていても、ハードな舞台になるとボイストレーニングでもカバーできないほど喉がすごく弱かったので、体力的な心配がありました。

そういった挫折は何度も味わっているんですね。

それでも表に出る人間として、前を見てしっかり生きていかなくちゃいけないので、何か自分自身できることが必ずあるはずだと信じていました。それが、デザインだったんだとやっと気づくことができました。曲や衣装をつくるように丁寧に作品と向き合い、いざプレゼンテーションのときには自分が夢中で励んだステージのように、相手の心に届ける。自分のデザインがビジネスとなり、少しでも社会につながることが嬉しい。

自分自身のブランディングもそう簡単にはいかない。時間をかけて挑んできた結果が、今、出てきているなという。この景色を目標に、本当にゆっくりと進んできました」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、巡航ミサイル発射訓練を監督=KC

ビジネス

午前の日経平均は反落、需給面での売りで 一巡後は小

ビジネス

利上げ「数カ月に1回」の声、為替の影響に言及も=日

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平の進展期待 ゼレンスキー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中