最新記事

株の基礎知識

野球選手の年俸で考える「安い株」「高い株」の見分け方

2022年5月31日(火)17時00分
朋川雅紀 ※かぶまどより転載

PERでバリュエーションを考える

バリュエーションの手法にはいろいろなものがありますが、今回は最もわかりやすい株価収益率(PER)を使って説明したいと思います。具体的には、「妥当なPERの水準」を見つける手がかりを考えます。

・PER=株価÷1株あたり利益(EPS)

まず、企業のEPSの成長率が高ければ高いほど、PERは高くなります。野球でいう打率ですね。したがって、高成長銘柄のPERは高くなります。

また、EPSの変動が少なければ少ないほど、PERは高くなります。

収益の変動を起こさせる要因として大きなものは景気です。そのため、景気の影響を比較的受けにくい生活必需品や医薬品のPERは高くなる傾向にあります。一方、景気の変動の影響を受けやすい素材、エネルギー、自動車、小売りなどのPERは低くなる傾向にあります。

さらに、財務リスクにしろ、ビジネスリスクにしろ、リスクの高い企業のPERは低くなる傾向にあります。上で述べた「安定性」とも深く関係しています。つまり、リスクが低いから、収益が安定するのです。

財務リスクとは「借り入れ」への依存度を示したものです。借り入れが多くなればなるほど、リスクが高くなり、PERは低くなる傾向にあります。それに対してビジネスリスクは「固定費」への依存度を示したもので、航空業界のように多額の設備投資が求められる企業のPERは低くなる傾向にあります。

■成長率か? それともリスクか?

では、EPSの成長率とリスクでは、どちらがより重要なのでしょうか。

結論から言います。重要なのは成長率です。成長率が高い企業は投資家から敬意を払われます。

サッカーの試合を考えていただければわかるように、点を取るのは、点を取られないようにすることよりもはるかに難しいことです。点を取られたくなければ、全員がゴール前に集まってディフェンスだけをしていればいいのですから。

企業にとっても、成長をあきらめてリスクを下げるだけであれば、そんなに大変ではありません。設備投資はやめて、借金を返して、ビジネスを縮小すれば、リスクは下がります。

反対に、成長するのは難しいことなのです。毎年ハードルが上げられていくわけですから、「成長し続ける」ことはとても大変なことです。だからこそ、成長し続けている企業には価値があると言えるのです。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

-日産、11日の取締役会で内田社長の退任案を協議=

ビジネス

デフレ判断指標プラス「明るい兆し」、金融政策日銀に

ビジネス

FRB、夏まで忍耐必要も 米経済に不透明感=アトラ

ワールド

トルコ、ウクライナで平和維持活動なら貢献可能=国防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中