野球選手の年俸で考える「安い株」「高い株」の見分け方
PERでバリュエーションを考える
バリュエーションの手法にはいろいろなものがありますが、今回は最もわかりやすい株価収益率(PER)を使って説明したいと思います。具体的には、「妥当なPERの水準」を見つける手がかりを考えます。
・PER=株価÷1株あたり利益(EPS)
まず、企業のEPSの成長率が高ければ高いほど、PERは高くなります。野球でいう打率ですね。したがって、高成長銘柄のPERは高くなります。
また、EPSの変動が少なければ少ないほど、PERは高くなります。
収益の変動を起こさせる要因として大きなものは景気です。そのため、景気の影響を比較的受けにくい生活必需品や医薬品のPERは高くなる傾向にあります。一方、景気の変動の影響を受けやすい素材、エネルギー、自動車、小売りなどのPERは低くなる傾向にあります。
さらに、財務リスクにしろ、ビジネスリスクにしろ、リスクの高い企業のPERは低くなる傾向にあります。上で述べた「安定性」とも深く関係しています。つまり、リスクが低いから、収益が安定するのです。
財務リスクとは「借り入れ」への依存度を示したものです。借り入れが多くなればなるほど、リスクが高くなり、PERは低くなる傾向にあります。それに対してビジネスリスクは「固定費」への依存度を示したもので、航空業界のように多額の設備投資が求められる企業のPERは低くなる傾向にあります。
■成長率か? それともリスクか?
では、EPSの成長率とリスクでは、どちらがより重要なのでしょうか。
結論から言います。重要なのは成長率です。成長率が高い企業は投資家から敬意を払われます。
サッカーの試合を考えていただければわかるように、点を取るのは、点を取られないようにすることよりもはるかに難しいことです。点を取られたくなければ、全員がゴール前に集まってディフェンスだけをしていればいいのですから。
企業にとっても、成長をあきらめてリスクを下げるだけであれば、そんなに大変ではありません。設備投資はやめて、借金を返して、ビジネスを縮小すれば、リスクは下がります。
反対に、成長するのは難しいことなのです。毎年ハードルが上げられていくわけですから、「成長し続ける」ことはとても大変なことです。だからこそ、成長し続けている企業には価値があると言えるのです。