最新記事

株の基礎知識

東証1部が「なくなる」──市場再編で何が変わるか、企業・マーケットの動きが活発になってきた

2021年7月20日(火)06時55分
佐々木達也 ※株の窓口より転載

■流通株式比率を高めるための株式売出

例えば、流通株式比率を満たすための株式の売り出しです。新基準では、プライム市場への上場には流通株式比率35%以上が求められるため、大株主の持ち株比率を下げる目的で、株式の売り出しを発表する企業が増えています。

アパレルECのZOZO<3092>は、創業者で前社長の前澤友作氏から持ち株の一部を取得しています。同時に外資系証券に新株予約権を割り当て、新株を発行して流通株式比率を高めようとしています。

また、人材・メディアサービス大手のリクルートホールディングス<6098>は2020年末にかけて、電通グループやフジ・メディア・ホールディングスなど取引先の8社が持ち合っていた株式を合計約4000億円で売り出しています。同社は海外でも成長期待が高いことから、海外での売り出しとなりました。

■ガバナンス強化で進む企業の公開性

また、企業のガバナンス強化も進むと見られます。プライム市場では東証が制定した企業統治の方針であるコーポレート・ガバナンスコードの全原則の適用を企業に求めています。

例えば、独立性のある社外取締役を少なくとも3分の1以上選任すべきとしています。さらに「投資家との建設的な対話」の促進のために、安定株主が株主総会で特別決議の可決のために必要な水準(3分の2)を超えないよう求めており、企業の公開性を重視していることがうかがえます。

東証の狙いは何なのか?

ところで、市場再編による東証の狙いは何でしょうか?

■持ち合いから「健全なモノ言う株主」へ

ひとつには、流通株式比率を重視することで、企業同士の株式持ち合いによる政策保有株式の削減をこれまで以上に加速させることがあります。

旧来、日本企業は、株式市場での資金調達(直接金融)よりも、銀行などからの借り入れ(間接金融)のウエイトが大きく、金融機関や取引先企業同士の株式持ち合いによる安定株主の比率が高かったのが現状です。そのため安定株主などの「(不健全な)モノ言わぬ株主」が多数を占めていました。

しかし、昨今では投資ファンドや個人株主、機関投資家においても、企業に対してきちんと提言を行って対話を求める、いわば「健全なモノ言う株主」を至極当たり前とする風潮が高まっています。こうした流れを受けて、中長期での企業価値の育成や公正な価格形成は東証の求めるところでしょう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国軍が台湾周辺で実弾射撃訓練、封鎖想定 過去最大

ビジネス

中国、来年の消費財下取りに89億ドル割り当て スマ

ワールド

カンボジアとの停戦維持、合意違反でタイは兵士解放を

ワールド

韓国大統領、1月4ー7日に訪中 習主席とサプライチ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 6
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 7
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中