東証1部が「なくなる」──市場再編で何が変わるか、企業・マーケットの動きが活発になってきた
■流通株式比率を高めるための株式売出
例えば、流通株式比率を満たすための株式の売り出しです。新基準では、プライム市場への上場には流通株式比率35%以上が求められるため、大株主の持ち株比率を下げる目的で、株式の売り出しを発表する企業が増えています。
アパレルECのZOZO<3092>は、創業者で前社長の前澤友作氏から持ち株の一部を取得しています。同時に外資系証券に新株予約権を割り当て、新株を発行して流通株式比率を高めようとしています。
また、人材・メディアサービス大手のリクルートホールディングス<6098>は2020年末にかけて、電通グループやフジ・メディア・ホールディングスなど取引先の8社が持ち合っていた株式を合計約4000億円で売り出しています。同社は海外でも成長期待が高いことから、海外での売り出しとなりました。
■ガバナンス強化で進む企業の公開性
また、企業のガバナンス強化も進むと見られます。プライム市場では東証が制定した企業統治の方針であるコーポレート・ガバナンスコードの全原則の適用を企業に求めています。
例えば、独立性のある社外取締役を少なくとも3分の1以上選任すべきとしています。さらに「投資家との建設的な対話」の促進のために、安定株主が株主総会で特別決議の可決のために必要な水準(3分の2)を超えないよう求めており、企業の公開性を重視していることがうかがえます。
東証の狙いは何なのか?
ところで、市場再編による東証の狙いは何でしょうか?
■持ち合いから「健全なモノ言う株主」へ
ひとつには、流通株式比率を重視することで、企業同士の株式持ち合いによる政策保有株式の削減をこれまで以上に加速させることがあります。
旧来、日本企業は、株式市場での資金調達(直接金融)よりも、銀行などからの借り入れ(間接金融)のウエイトが大きく、金融機関や取引先企業同士の株式持ち合いによる安定株主の比率が高かったのが現状です。そのため安定株主などの「(不健全な)モノ言わぬ株主」が多数を占めていました。
しかし、昨今では投資ファンドや個人株主、機関投資家においても、企業に対してきちんと提言を行って対話を求める、いわば「健全なモノ言う株主」を至極当たり前とする風潮が高まっています。こうした流れを受けて、中長期での企業価値の育成や公正な価格形成は東証の求めるところでしょう。