新卒1カ月で無職になった彼女を、Forbes選出の起業家に変えた1冊の本
一般社団法人WaffleのCo-Founder/CEO、田中沙弥果氏 Photo: Rika Usami-Newsweek Japan
<女子中高生向けIT教育などを手掛け、起業家として活躍するWaffleの田中沙弥果CEOだが、新卒入社した会社を辞め、再就職もできず苦しんだ時期もあった。そんな彼女には「人生を作る1冊」になった、20歳の時に出合った本があるという>
田中沙弥果(さやか)さんには、20歳の時から、ずっと読み続けている本がある。スタンフォード大学工学部教授のティナ・シーリグによる『20歳のときに知っておきたかったこと――スタンフォード大学集中講義』(CCCメディアハウス、2010年刊行)だ。
一般社団法人WaffleのCo-Founder/CEOである田中さんは、世界を変える30歳未満の日本人30人をForbes JAPAN誌が表彰する「30 UNDER 30 JAPAN 2020」に選出された起業家。IT分野のジェンダーギャップを埋めるべく、女子中高生向けのIT教育や政策提言を実施している彼女にとって、その本はまさに「人生を作る1冊」になったという。
新卒で入社した会社を1カ月で辞めた。その後、アメリカでティナ・シーリグ本人に会い、今は起業家として活躍している。そんな田中さんは『20歳のときに知っておきたかったこと』のどこに魅力を感じたのか――。
このたび、30万部ベストセラーの同書を大幅に増補した『新版 20歳のときに知っておきたかったこと――スタンフォード大学集中講義』(CCCメディアハウス)が刊行されたのを機に、話を聞いた。
20歳の時の夢は、スタンフォード大学に通うこと
それまではあまり本を読む習慣はなかったんですけれど、たまたま通りかかった本屋で『20歳のときに知っておきたかったこと』というタイトルを目にして。ちょうど大学生で20歳だったので、どんなことが書いてあるのかちょっと知っておきたいなと思って、手に取りました。
大阪府内の大学に通っていた当時の夢は、JICA(国際協力機構)で働くこと。貧困や難民の問題について学んでいたことから、グローバルな視点で社会課題を解決する仕事に就きたいと、漠然と考えていた。そんな彼女はこの本を読んだことで、スタンフォード大学に行きたいと思うようになったという。
冒頭で「2時間あげるから、元手の5ドルを増やす方法を考えてください」という課題をどう解決していくのかのエピソードが紹介されているのですが、それを読んで「世の中にはこんな教育があったんだ!」とワクワクしました。
そして、実験的に価値を最大化する体験や、創造性や行動力でチャンスを広げていく教育に魅了されて、スタンフォード大学に行きたいと思い始めたんです。でも、どうしたら行けるか分からなかったので、このときは「自分には無理だ」と思って諦めてしまった。
2013年に田中さんは、アメリカの大学への憧れからスタンフォードではない別の大学に留学する。そしてそこで目にしたものを機に、テクノロジーに関わる仕事をしたいと考えるようになった。