オンラインプレゼンの秘訣を世界最高峰の「スピーカーズ・コーチ」に学ぶ
そのために著者は、複数の感覚に訴えることを勧めている。写真やグラフを見せたり、物語や音楽などを聞かせたり、何かを書いてもらったり。ただ「話を聞く」だけにならないように、聴衆側にも変化を持たせるのだ。
また、プレゼンの冒頭は記憶に残りやすく、関心を呼ぶだけでなく、勢いに乗って本題に入っていきやすい。つまり、プレゼンも「つかみ」が重要ということだ。そこで、最初の30秒で聴衆の関心を引きつけるために「小道具を使う」などの具体的手法も紹介されている。
他にも、「相手にとっての起点から始める」「現状と改善後の状況を示す」「行動への動機付けを与える」といった構成上のヒントに加えて、「スライドがプレゼンなのではない」「『記憶に残るスライド』の5原則」といったアドバイスもある。準備段階でやるべきことは多い。
「時間になりましたので」で終わるのはもったいない
あのスティーブ・ジョブズも、アップルの主要な製品を発表する際には必ず、何時間も入念なリハーサルをしていたという。第2段階の「練習」でいかに細かく練り上げられるかが、本番で大きな差を生むのだ。
人前で話すときには、なるべくあがらないようにしたいと思うものだが、著者は「落ち着き払う必要はない」と述べる。落ち着いた状態は確かに望ましいが、いくらか緊張することもプラスに働くからだ。それに、リラックスし過ぎると慢心につながる恐れもある。
また、完璧なパフォーマンスをイメージして試合に臨むアスリートのように、頭の中でリハーサルして成功を視覚化することも、成功の可能性が高まるそうだ。
だがもちろん、実際のリハーサルこそが成否のカギを握る。話の達人たちは2種類のリハーサルをしているという。ひとつは「作り出すリハーサル」で、もうひとつは「磨き上げるリハーサル」。2つのリハーサルで十分に練習を行うことで、熟練のパフォーマンスが可能になる。
十分な準備と入念な練習をすれば、自信を持って本番に臨める。いよいよ「実行」の時だ。ここでは、「聞きやすい声」にする具体的な秘訣のほか、相手を名前で呼んで話してかけることのメリット、質疑応答の時間を建設的にする方法などが紹介されている。
そして最後は、静かに終わるのではなく、力強く締めくくることが大切だと著者は言う。「つかみ」と同様に、「締め」もまた重要なのだ。「時間になりましたので」と言って終わってしまうのは非常にもったいない。終わり方に知恵を絞ることで、聞く側の動機づけにもなる。