アフターコロナの景気はどうなる? 景気判断の経済指標をイチから解説
■遅行指数:完全失業率
完全失業率とは、15歳以上の働く意思のある人のうち「現在仕事についていない」「仕事があればすぐに働ける」「仕事を探す活動をしている」という条件をすべて満たす失業者の割合を示します。景気が悪くなった後に失業者が増えることから、完全失業率は「遅行指数」になります。
2020年4月の完全失業率は2.6%と、前月から0.1ポイント悪化。完全失業者の数が6万人(季節調整値)増加したことになります。しかしながら、遅行指数であることから、これは半年前の景気への反応と見ることができ、コロナ禍による失業者数の増加は今後さらに大きくなることが考えられます。
●指数で見る景気の「山」と「谷」
実際にこれらの景気動向指数を用いて景気を評価する際には、コンポジット・インデックス(CI)とディフュージョン・インデックス(DI)という2つの見方があります。
CIは、構成する指標の動きを合成することで景気変動の大きさやテンポを表し、2015年を100として、前月より高くなっていれば景気回復が進んでいる、と判断します。
一方のDIは、構成する指標のうち上昇を示す指標の割合が数カ月連続して50%を上回っていれば景気拡大、50%を下回っていれば景気が後退している、と判断します。
日本では、内閣府が専門家を集めて開催する「景気動向指数研究会」によって、景気の「山」と「谷」が判断されています。その基準となっているのはCIで、具体的には、景気の現状を示す「一致指数」が上がっているか下がっているかを見て、景気に関する政府の公式見解(基調判断)として発表しています。
5月に発表された2020年3月の一致指数は前月比5.2ポイント低下の90.2で、基調判断は「悪化」となりました。つまり、景気後退の可能性が高いということです。推移を示すグラフからも、新型コロナウイルスの感染拡大が景気に大きな影響を与えていることがわかります。
経済規模を知る「GDP(国内総生産)」
景気動向指数とともに景気の良し悪しを判断する際に使われる経済指標が「GDP(国内総生産)」です。国内で生み出された付加価値の総額を示し、国内の経済活動の規模を知るための指標として用いられます。
GDPの値が大きければ経済規模が大きい、小さければ経済規模が小さいというように、国ごとの経済規模の大きさを比べる際にも使われますが、同時に、前年と比べて値が大きくなっていれば「景気が良くなっている」と判断することができます。
2019年10~12月期のGDPは、物価変動を除いた実質で前期比1.9%減、年率換算では7.3%減となりました。世界経済の減速もありましたが、消費税率の引き上げが大きな原因となったのは言うまでもありません。
そして2020年1~3月期は、物価変動を除いた実質で前期比0.9%減、年率換算では3.4%減(いずれも速報値)。新型コロナウイルスの感染拡大によって2四半期連続でマイナス成長となりました。また、2019年度の実質GDPも前年度比0.1%減となり、実に5年ぶりのマイナス成長です。
欧米では、GDPが2四半期連続でマイナスになると「リセッション(景気後退)」とみなします。つまり欧米の基準で考えると、日本は景気後退期に入ったと考えられるわけです。