最新記事

株の基礎知識

アフターコロナの景気はどうなる? 景気判断の経済指標をイチから解説

2020年6月3日(水)19時20分
山下耕太郎 ※株の窓口より転載

Matejmo-iStock.

<投資をするなら知っておきたい、景気の現状を理解するための基礎知識。新型コロナウイルスのインパクトはリーマンショック以上とも言われるが、実際のところ、どうなのか。いつまで続くのか>

コロナ後の景気を見通す

株の世界だけでなく日常生活でもよく話題に上る「景気」ですが、具体的には、経済活動全般の動向のことを意味します。では、それを具体的にどうやって判断するか、ちゃんと理解しているでしょうか? 個人の主観や印象では判断がバラバラになり、経済や相場の先行きを見通す参考になりません。

景気の良し悪しは「経済指標」によって判断されます。日本で使われている経済指標は「景気動向指数」と「GDP(国内総生産)」の2つで、これらの指標が良ければ「景気が良い」「好景気」と呼ばれ、悪ければ「景気が悪い」「不景気」あるいは「不況」と呼ばれるのです。

新型コロナウイルスのパンデミックによって、今後の景気はどうなるか心配している人も多いでしょう。景気を判断する経済指標を理解することで、ニュースや他の人の意見を待たずとも、景気の現状を理解することができるようになります。

景気全体を知る「景気動向指数」

ニュースでもよく耳にする「景気動向指数」は、産業や金融、労働など、経済にとって重要かつ景気に敏感な28の「景気指標」をもとに算出される指数です。景気全体の状況を判断したり、将来の動向を予測したりするときに使われます。

この景気指標は、数か月先の景気の動きを示す「先行指数」、景気の現状を示す「一致指数」、さらに半年から1年遅れで反応する「遅行指数」の3つに大別されます。それぞれの代表的な指数を見てみましょう。

■先行指数:東証株価指数(TOPIX)

景気動向指数の「先行指数」として採用されているのが、「東証株価指数(TOPIX)」です。東証1部に上場する全銘柄を対象とした株価指数で、日経平均株価とともに日本の代表的な株価指数です。

景気の先行きを知るための指標として株価指数が使われているということは、「株価は景気に先行して動く」ことが公的に認められているということを意味します。言い換えれば、株価を見ても「現在の景気」はわからない、ということにもなるでしょう。景気と株価の関係については、後ほど詳しく解説します。

■一致指数:有効求人倍率

「有効求人倍率」とは、世の中にどのくらい仕事(求人)があり、それに対してどのくらい応募があるのかを表しています。求人募集が200件、仕事を探している人が100人だとすると、有効求人倍率は2倍になります。

景気が良くなって仕事が増えれば、有効求人倍率は高くなります。したがって、有効求人倍率が高いほど景気は良いと判断できます。こうした労働市場の状況は景気にほぼ一致するので、有効求人倍率は、景気の現状を示す「一致指数」として重視されます。

2020年3月の有効求人倍率は1.39倍で、3年半ぶりの低い水準となりました。さらに、4月は前月比0.07ポイント低下の1.32倍。これは、2016年3月以来の低水準です。緊急事態宣言を受けて経済活動が落ち込み、企業の採用意欲は急速に低下したことを示しています。

ただ、リーマンショックの際には、翌年の2009年に0.47倍まで低下しています。今後も有効求人倍率の動向には注意が必要でしょう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上

ワールド

ガザ支援搬入認めるようイスラエル首相に要請=トラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中