最新記事

インタビュー

出口治明「人間は皆そこそこに正直でかつずる賢いしお金に汚い。基本的には信頼するしかない」

2020年4月1日(水)11時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

――とはいえ、その境地に行けない人がほとんどですよね。なんとなく将来不安もありますし、周りが信じられない。

「悟ってますね」とよくいわれるのですが、僕は、悟りとか大嫌いなんですよ。「ファクトですよ」って僕はいっているのです。人間社会の真実を直視することです。去る者を追って、よかったことはないと、孟子の時代から偉人が述べているわけですから。

――人を信用できないといえば、『得する、徳。』でも触れられていますが、中国は人工知能(AI)とビッグデータをフル活用して、データ管理社会化を徹底して進めています。結果的に、治安の側面では効果が出ていて、倫理観が向上したとの声もあります。データ管理が進めば、外圧で人の倫理観が変わる、人を信用するようになる時代が来ることも考えられますか。

それはどうでしょう。ただ、監視カメラやデータ管理があろうとなかろうと、「天知る、地知る、我知る、人知る」なので、何をやろうとみんなが見ています。例外はあるかもしれませんが、悪事はほとんどが、どうせバレるんですよ。

――でもそういう気持ちになれない人が多いのが現実です。

不勉強の一言に尽きます。歴史上人間がやってきた悪事を見てきたら、悪事は必ずバレる。人の口に戸は立てられない。これは、悟れないのではなくて不勉強の一言に尽きます。

――要するに、歴史を知れば、合理的に、どういう行動をすればわかるということですね。

たくさんの人に会い、たくさん本を読み、いろんな所へ行ったら、わかるはずです。だから、悟りではないんですよ。人が信用できないのも、行動できないのも知識の不足です。

例えば、「清水の舞台から飛び降りる」という言葉がありますよね。必死の覚悟で実行するという意味ですね。これは清水の舞台から飛び降りることは怖いし、極めてリスクが大きくて危ないと思われていることの裏返しです。

しかし、大事なのは清水の舞台から飛び降りるのが本当に怖いのですかという話の方です。怖いのは、不勉強だからです。清水の舞台の下が何メートルあるかがわからないから怖いんですよ。実は12メートルぐらいしかないんです。そのファクトがわかれば、12メートルのロープを買ってきてロープ伝いに下れば少しも怖くないんですよ。ファクトがわかればリスクはコスト(ロープ代金)に転化するのです。

勉強してファクトがわかれば、ほとんどのことの対処法は自然と出てきます。多くの人に必要なのは悟りではなくて、人、本、旅の不足だと思います。

――なんとなく、イメージだけで膨らませて、不安になるって言う人が多いと思うんですけど、やっぱり勉強不足ということですね。

そうですね。「知識は力」ですから。

※インタビュー第3回:出口治明「社会的責任を叫びながら、いざ不祥事になると平気で居座る経営者はおかしくありませんか」に続く。

※インタビュー第1回:出口治明「日本は異常な肩書社会。個人的な人脈・信用はなくても実は困らない」


得する、徳。
 栗下直也 著
 CCCメディアハウス

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

cover200407-02.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月7日号(3月31日発売)は「コロナ危機後の世界経済」特集。パンデミックで激変する世界経済/識者7人が予想するパンデミック後の世界/「医療崩壊」欧州の教訓など。新型コロナウイルス関連記事を多数掲載。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

豪中銀、インフレ定着なら追加利上げも=ブロック総裁

ビジネス

米フォード、全社的なボーナス増額 車両の品質改善受

ワールド

トランプ氏、国防総省に石炭火力発電所からの電力購入

ビジネス

ECB、EU首脳に危機耐性強化に向けた重要改革項目
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 6
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 7
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 8
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 9
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 10
    まさに「灯台下暗し」...九州大学の研究チームが「大…
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中