囚人コーチが教える最強の部屋トレ 自重力トレーニングの驚くべき効果とは?
自重力トレーニングの世界に君臨するこの純粋主義者は、昨年(2018年)『Convict Conditioning DVD シリーズ』をリリースしている。サンフランシスコ湾に浮かぶ脱出不可能な監獄島、アルカトラズで撮影したものだ。
シリーズでは「ビッグ6」のうちの5つ(ハンドスタンド・プッシュアップは未発売)が取り上げられ、「ビッグ6」各動作の10ステップが、映像とイラスト付きのマニュアルで説明されている。
ウェイドはインタビューを受けることがあまりない。しかし、(取材当時)執筆中だった『Convict Conditioning 3』(邦訳版『プリズナートレーニング 実戦!!! スピード&瞬発力編』山田雅久訳、CCCメディアハウス、2019年)の作業を中断し、「どこにでも持ち運べる究極のバーベル」について、また、Bodybuilding.comの寄稿者でもあるアル・カバドロと最近立ち上げたワークショップ(プログレッシブ・キャリステニクス〔漸進的に負荷を上げていくキャリステニクス〕検定)についてメールを通じて答えてくれた。
――私たちのほとんどは「キャリステニクス」という用語を知っています。しかし、プルアップからジャザサイズ(ダンス、筋力トレーニング、音楽を組み合わせたトレーニング)まで、人によって思い浮かべるものが違います。あなたにとってそれは何を意味し、また「プログレッシブ」キャリステニクスとは何ですか?
私にとってのキャリステニクスは、体の動きに精通し、それを制御する技術のことだ。それ以外の何物でもない。
キャリステニクスで動かすのは自分の体であり、バーベル、ダンベル、マシン、あるいはテレビで紹介されるガジェットではない。つまり、フィットネスにおける周辺事項ではない。すべてのトレーニングの中心にあるものだ。
ヨガも柔軟性トレーニングも、あるやり方で体を動かす。ランニング、水泳、有酸素運動も同じだ。それらはキャリステニクスと言える。
バランストレーニングや逆立ちもそう。アジリティ(俊敏な転換能力)ワーク、タンブリング(床の上で跳躍や回転を行う運動)、ジャンプ、フリップ、キック。すべて体重を用いて体を動かすことで筋力を高める動作だ。それが筋力トレーニングの最も原初的なやり方であり、それがキャリステニクスだ。
プログレッシブ・テクニック(漸進的技術)を使えば、ばかばかしいほど簡単にできるリハビリレベルの動作から、人間のパワーと能力の限界ともいえる「holy shit」(ウソだろ?)のレベルまで、自重力エクササイズのシリーズが組み立て可能になる。
プルアップがいい例だ。ほとんどのコーチは、両腕でやる普通のプルアップを知っている。しかし、ジャックナイフ・プルアップやレッグアシステッド・プルアップのようなそれより簡単なバージョンを知っているだろうか? もっと難しいプルアップは?
バーベルやダンベルを使ったトレーニングと同じで、強くなりたかったら、ターゲットにしているレップ数をクリアし、そこからよりタフな世界へと向かう。
バーベルトレーニングなら簡単にそれができる。ウエイトを追加するだけでいいからだ。体の動かし方を変えるプログレッションを学ぶキャリステニクスでは、もっと知的なアプローチが必要になる。
私は、ワンアーム・プルアップに至るまでの30かそれ以上の異なるプログレッションを教えることができる。ワンアーム・プルアップが6回できるようになれば、腕相撲コンテストで平均的なボディビルダーの骨を折る筋力が身につくだろう。ビア樽のような上腕二頭筋も手に入る。
ヘナチョコが怪物に変わっていく。それがプログレッシブ・キャリステニクスだ。しかし、この種の技術を誰が教えてくれるというのか? それは監獄の外の世界でほとんど失われてしまった技術だ。