増やすより大切なのは「守る」──誰もが資産運用をすべき理由
このように、インフレになったときのリスクをきちんと考えておかないと自分の資産を守ることは難しくなります。そのためにも、インフレになっても資産の価値が下落しないように、主体的に資産を管理運用しておくことが大切なのです。
そのために有効な1つの方法が株式や投資信託などへの投資です。
投資をすることにより資産を運用してお金を増やせば、老後のために準備しておく資金が少なくて済みます。お金があるからといって幸せになれるとは限りませんが、お金があれば人生の選択肢が広がります。今の自分が将来の自分を支えるという考え方です。
日本の経済環境と「自分でやりなさい」のメッセージ
今、日本人が置かれている環境を考えてみましょう。
日本では約20年、物価が上がらない状況が続いてきたため、多くの人にとって物価が上昇していくイメージが湧きません。
先ほど述べたように、政府と日銀はインフレ率2%を目標に政策を運営しています。狙い通りインフレが進むかどうかは分かりませんし、政策の是非は置いておいても、インフレが進んでいく事態も想定しておく必要があります。
金利水準が低く抑えつけられたままで物価だけが上昇していく事態になった場合、投資もせずにただお金を銀行や保険会社に預けておくだけでは、資産の実質的価値がどんどん目減りしてしまいます。
過去には物価上昇に応じて預金金利も上昇していた時代がありましたが、現在の経済環境や金融政策を考慮すると預金金利は上がりにくく、日本では低金利が続くと考えられます。そのような中、消費税の増税も予定されています。社会保障費の負担も少しずつ増加してきました。
年金制度改革は進んでいるものの、社会情勢に合わせて年金給付水準を調整する「マクロ経済スライド」により、実質的な給付水準は引き下げられる見込みです。要するに、入ってくるお金は少なくなるのに、出ていくお金は多くなるという状況が予想されます。
そして、今や人生は100年時代。長寿化が進み、65歳の平均余命は男性が20年、女性が24年です。さらに65歳男性の4人に1人は90歳を超えます。65歳女性の場合は4人に1人が95歳超となります。
これからの時代は100歳までの人生に備えておく必要があります。人生後半の働き方や生活スタイルも多様化するなか、既存の標準的なモデルではなく自分自身の生き方に合うマネープランを考えることも重要になります。
国は、「老後生活のお金の準備は各個人でやりなさい」というメッセージを既に発信しています。
そして、NISA(少額投資非課税制度)の拡充や個人型確定拠出年金(iDeCo)の対象者の拡大など、個人個人が資産運用に取り組むべき環境が整えられています。この流れは今後も進んでいくことが考えられます。