最新記事

資産運用

増やすより大切なのは「守る」──誰もが資産運用をすべき理由

2018年7月9日(月)19時30分
高橋忠寛

このように、インフレになったときのリスクをきちんと考えておかないと自分の資産を守ることは難しくなります。そのためにも、インフレになっても資産の価値が下落しないように、主体的に資産を管理運用しておくことが大切なのです。

そのために有効な1つの方法が株式や投資信託などへの投資です。

投資をすることにより資産を運用してお金を増やせば、老後のために準備しておく資金が少なくて済みます。お金があるからといって幸せになれるとは限りませんが、お金があれば人生の選択肢が広がります。今の自分が将来の自分を支えるという考え方です。

日本の経済環境と「自分でやりなさい」のメッセージ

今、日本人が置かれている環境を考えてみましょう。

日本では約20年、物価が上がらない状況が続いてきたため、多くの人にとって物価が上昇していくイメージが湧きません。

先ほど述べたように、政府と日銀はインフレ率2%を目標に政策を運営しています。狙い通りインフレが進むかどうかは分かりませんし、政策の是非は置いておいても、インフレが進んでいく事態も想定しておく必要があります。

金利水準が低く抑えつけられたままで物価だけが上昇していく事態になった場合、投資もせずにただお金を銀行や保険会社に預けておくだけでは、資産の実質的価値がどんどん目減りしてしまいます。

過去には物価上昇に応じて預金金利も上昇していた時代がありましたが、現在の経済環境や金融政策を考慮すると預金金利は上がりにくく、日本では低金利が続くと考えられます。そのような中、消費税の増税も予定されています。社会保障費の負担も少しずつ増加してきました。

年金制度改革は進んでいるものの、社会情勢に合わせて年金給付水準を調整する「マクロ経済スライド」により、実質的な給付水準は引き下げられる見込みです。要するに、入ってくるお金は少なくなるのに、出ていくお金は多くなるという状況が予想されます。

そして、今や人生は100年時代。長寿化が進み、65歳の平均余命は男性が20年、女性が24年です。さらに65歳男性の4人に1人は90歳を超えます。65歳女性の場合は4人に1人が95歳超となります。

これからの時代は100歳までの人生に備えておく必要があります。人生後半の働き方や生活スタイルも多様化するなか、既存の標準的なモデルではなく自分自身の生き方に合うマネープランを考えることも重要になります。

国は、「老後生活のお金の準備は各個人でやりなさい」というメッセージを既に発信しています。

そして、NISA(少額投資非課税制度)の拡充や個人型確定拠出年金(iDeCo)の対象者の拡大など、個人個人が資産運用に取り組むべき環境が整えられています。この流れは今後も進んでいくことが考えられます。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定に4日署名も=関係筋

ビジネス

カナダ、報復関税発動 トランプ氏は「相互関税に直面

ワールド

ロシア大統領「ミャンマーとの関係着実に発展」、軍政

ワールド

プーチン大統領、米イラン間の仲介で合意 核協議など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政権の対カナダ25%関税
  • 3
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Diaries』論争に欠けている「本当の問題」
  • 4
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    バンス副大統領の『ヒルビリー・エレジー』が禁書に…
  • 7
    「70年代の日本」を彷彿...発展を謳歌する「これから…
  • 8
    米大統領執務室での「公開口論」で、ゼレンスキーは…
  • 9
    米ウクライナ首脳会談「決裂」...米国内の反応 「ト…
  • 10
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 5
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 6
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 7
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 8
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 9
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中