最新記事

対談

学生はバイトするな、お金のために時間を犠牲にするな【箕輪×正田】

2018年2月21日(水)18時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

――最近の20代を見ていてどう思うか。

箕輪 起業家にしても、上の世代に比べると、さっぱり感がありますよね。上の世代は起業というと命懸け。下の世代はサクッとサービス作っちゃいましょう、みたいなノリです。成功する難しさはそんなに変わってないと思うけど、マインドが変わってきた。

それから、社会的に見ても「倒産したら夜逃げ」という時代ではなくなっていますよね。上の世代は「借金したら首をつる」という覚悟だったろうと思うけど、若い世代はむしろ、借金の大きさはスケールの大きさだという発想すらある。

正田 借金でも、銀行から借金するのと、投資家から出資を受けるのとでは、結構違ってきます。銀行が貸す金は、だいたい年商の範囲内です。要は、経営者にとって動かしたことのある、見たことのある金額なわけです。

これが出資を受けるとなると、ちょっとしかサービスができていない段階で、何億円という見たことのないようなお金を借りることになる。

その現実感のなさが、世代の違いにも表れているのでしょう。今の起業家は、ダメなら「また次の事業計画書持ってきたんで、出資お願いします」と投資家に言うかもしれない。

箕輪 それでいいと思うんですよね。10"張って"1当たればいいという発想で。

正田 家がお金持ちだったり、本人が美人だったりしたら、それこそチャンスは無限大にあるから、若いうちにどんどん起業したほうがいいって思っちゃいますね。

(高校時代に起業した)椎木里佳さんも、もっといろんな事業やったほうがいいのに。

箕輪 小さくまとまる必要ないですよね。

正田 学生起業でよくないのは、何をしたらいいか思いつかないからといって、学生向けのマーケティング会社をやりたがること。あれをやると成長しないんです。

僕は今、中学生に出資するプロジェクトをやろうとしているんです。ベンチャーキャピタルを通じて中学生に10億円を調達させようと。ただし、学生マーケティングはダメというのを縛りにしている。

箕輪 それは、彼らが大人になったときに通用しなくなるからですか。

正田 学ぶ気力がなくなるからです。「自分たちは中学生のことしか知らないから、中学生を相手にする」とやっていると、新しいことを学ばなくなるんです。

16歳で1億調達した、山内奏太くんという子がいます。彼が作ったのは、カード決済のアプリです。すごく面白いのは、彼はまだカードを作れる年齢じゃないんです(笑)。「決済したこともないのになんで決済系アプリが流行るなんて思うんだよ?」と思うけど、決済したことのない子が作る決済系のアプリだからこそ、面白いんですよね。

ほかにも「キャバクラに行ったことのない人間が考えるキャバラクラ」とか、面白いのが多いですから。お金を出すほうも、そういう面白さが欲しいんです。だから、「学生マーケティングはダメだよ」と言っている。

箕輪 発想が飛躍しないで、ありがちなところに落ち着いちゃうんですね。

――新しい価値観を持った世代は増えている一方で、安定に向かう若者もいるようだ。

箕輪 最近、大学生と関わる機会が多いんですが、両極端ですね。(キングコングの)西野さんとか堀江さんにカリスマ性を感じるアクティブな大学生が1割ぐらい、あとは本当に保守的でお役所的な感じです。「銀行に就職します」みたいな。

正田 公務員になりたいという人もまだまだ多いみたいですね。

箕輪 もちろん、10割がチャレンジャーである必要はまったくない。でも、だからこそリスクを取れる人には大チャンスだと思います。草食動物ばかりのところに解き放たれた肉食動物みたいな(笑)。

僕は(ネオヒルズ族を自称していた起業家)与沢翼のこともずっと隣で見ていたんですが、彼もリスクを取る力がすごい。毎回全部、"張る"んですよね。だから大きく儲かることもあれば、大きく潰れることもあるんですが、今の世の中、リスクといっても全財産を失うとかネットで叩かれるぐらいで、死ぬわけじゃないですよね。

リスクをリスクと思わないという魔法を手に入れるだけで、だいぶアドバンテージですよね。バットを振りまくっていたら、誰でも絶対いつかは成功するんじゃないでしょうか。

※対談前編:日本の若者がシリアルアントレプレナーを目指すべき理由

Text:東 雄介


『サクッと起業してサクッと売却する
 ――就職でもなく自営業でもない新しい働き方』
 正田 圭 著
 CCCメディアハウス

【お知らせ】
ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮情勢から英国ロイヤルファミリーの話題まで
世界の動きをウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

ニューズウィーク日本版 ガザの叫びを聞け
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月2日号(11月26日発売)は「ガザの叫びを聞け」特集。「天井なき監獄」を生きる若者たちがつづった10年の記録[PLUS]強硬中国のトリセツ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港大規模火災の死者83人に、鎮火は28日夜の見通

ワールド

プーチン氏、和平案「合意の基礎に」 ウ軍撤退なけれ

ワールド

ウクライナ、和平合意後も軍隊と安全保障の「保証」必

ビジネス

欧州外為市場=ドル週間で4カ月ぶり大幅安へ、米利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 8
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中