最新記事

リーダーシップ

自ら考える部下の育て方は「日本一オーラのない監督」が知っていた

2018年1月19日(金)17時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

スキルとスタイルの違い

ここでいうスタイルとは「一貫性」や「こだわり」、あるいは「らしさ」という言葉に置き換えられる。このような場合にも、対極視点法が有効だ。スタイルとはどのようなものかを明確にするために、対極に位置づけた「スキル」と対比して考えてみたいと思う。

スキルというのは人間の持っている能力や技術と理解してもらえると分かりやすい。第2章で触れた企画力、情報収集力、表現力といった「〜力」という表現がしっくりいくものである。そうしたスキルは、基本的に「良し悪し」を軸として評価される。その人に、そのスキルがあるか否か、もしくはすごく長けているかそうでないかがはっきりとしており、分析手法が体系化されていれば、点数をつけることも可能である。

特に仕事においてはそうしたスキルを、資格制度でランク付けしたり、試験で順位を出したりすることも少なくない。例えば、「営業力ならオレが会社で一番だ。しかし、企画力ならば社内では誰もA君には及ばないな」といった具合にナンバーワンを決めることができる。要するに、その人の持ち得ているスキルが良いか悪いかが価値基準となる。

それに対してスタイルの価値判断は全く別の軸で下されなければならない。スキルのように点数での比較は極めて難しい。スタイルが評価される軸は、あるかないか、である。

スタイルを持っているか、持っていないか。たとえそのスタイルが格好悪かったとしても、それを強烈に持つことが大切だ。強烈なスタイルを持つのではなく、スタイルを強烈に持つ。

また、スキルは点数化することが可能なため、組織の中でナンバーワンを決めることができる。一方で、スタイルはナンバーワンは決められない。「〜らしさ」や「こだわり」は、その良し悪しを追求するものではなく、あくまでもオンリーワンを追求する世界の話だからだ。もちろん、独りよがりな安易なオンリーワンは論外である。

さらに、スキルというものはドット(点)で示されるが、スタイルというものはライン(線)とイメージしてほしい。スキルはいくら集めてもドットにしかならないが、それを線にするのがスタイルである。

スタイルとは、一見しただけでは判断できない。だから、初対面でその人のスタイルを見極めるのは困難である。その相手に何度も会い、たくさんの場面におけるその人の言動をつなげていくことで、スタイルが見出され、理解することができる。例えば、次の場面での言動をつなげていくとその人のスタイルの有無が見えやすい。

・忙しいときと暇なときの、人への対応や配慮の違い
・身体の調子がいいときと悪いときの、仕事ぶりの違い
・自分の上司と部下に対する態度の違い
・仕事などで失敗したときと成功したときの、人への接し方の違い
・職場とプライベートでの、人付き合いの違い
・お酒を飲んだときと素面のときの、自己主張の仕方 など

いずれも、良い悪いや格好いいか悪いかの問題ではなく、一貫性があるかどうかがスタイルの有無につながる。だからこそ、リーダーは勇気を持ってスタイルを構築してほしいと思う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、シリア制裁解除で大統領令 テロ支援国家

ビジネス

ECBの次回利下げ、9月より後になる公算=リトアニ

ワールド

トランプ氏、日本に貿易巡る書簡送付へ 「コメ不足な

ワールド

米政権がロス市提訴、ICE業務執行への協力制限策に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引き…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    飛行機のトイレに入った女性に、乗客みんなが「一斉…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中