自ら考える部下の育て方は「日本一オーラのない監督」が知っていた
真ん中が「日本一オーラのない監督」こと中竹竜二氏(写真提供:ほぼ日刊イトイ新聞)
<ジェフ・ベゾスのようなカリスマに誰もがなれるわけではないし、カリスマ的リーダーシップには限界もある。いま注目が高まる新しいマネジメントのアプローチ「フォロワーシップ」とは何か>
出世したくても出世できない人や、そもそもリーダーになることに興味のない人がいる一方、「自分は向いていないのに、役職を与えられてしまった......」という人も少なくないだろう。
だが心配はいらない。誰もが、ジェフ・ベゾスや孫正義、馬雲(ジャック・マー)のようなカリスマ的なリーダーにならなければいけないわけではない。リーダーシップの形は1つではなく、強い組織をつくるリーダーには誰でもなれるのだ。
そう主張するのは、日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターの中竹竜二氏。リーダーシップにはさまざまなアプローチがあり、なかでも近年有効性が評価されているアプローチが「フォロワーシップ」だ。彼は2000年代前半からその重要性を訴え続けてきた。
早稲田大学ラグビー蹴球部で主将を務め、全国大学選手権で準優勝。大学卒業後、イギリス留学、シンクタンク勤務を経て、2006年、母校の監督になった。現役時代は主将だったがあまり試合に出ておらず、ラグビー指導者の実績もなかったが、「日本一オーラのない監督」と言われながらも全国大学選手権2連覇を達成した。
退任後も、U20(20歳以下)日本代表監督としてワールドラグビーチャンピオンシップでトップ10入りし、企業のリーダー育成に特化したプログラムを提供するチームボックスという会社を設立するなど、多方面で活躍を続けている。日本を代表するラグビー選手の五郎丸歩氏も、尊敬する人物に中竹氏の名前を挙げる。
では、その「フォロワーシップ」とはどんなものだろうか。中竹氏によれば、「組織を構成する一人ひとりが自ら考え、行動し、成長しながら組織に貢献するための機会を提供し、環境を整える努力をすること」だ。
日本の企業は長らく、強い牽引力のある言葉で部下に指示し、トップダウンで目標を設定して結果を出すカリスマ的なリーダーを求めてきた。しかし、そんな人物はなかなか現れないうえ、この方法では部下が育たないと、中竹氏は指摘する。
経済が停滞し、情報拡散スピードが速まるなど産業を取り巻く環境が変化している近年、カリスマ的リーダーシップの限界が露呈し、「自ら考える部下」が求められるようになっている。一方、「フォロワーシップ」を科学的に証明する研究が増え、実際に取り入れる企業や組織も増えているという。
その「フォロワーシップ」は、どのようにすれば実践できるのか。ここでは中竹氏の新刊『【新版】リーダーシップからフォロワーシップへ――カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス)から一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。第1回は「第3章 スタイルの確立」より。
スキルの習得よりも、スタイルの確立こそが、これからのリーダーに必要な条件である。
そうした前提に基づいて、リーダーシップを発揮する上でのスタイルの必要性を展開していきたい。
自分のスタイルを確立するためには、冷静な自己分析を行い、自己認識を的確にしなければならない。スキルやノウハウといった個別の力をつけることと、実際の現場で自分の本来持っている力を発揮することは、同じではない。