最新記事
寺社

「運を強くするにはどうしたらいいのか」...松下幸之助や稲盛和夫、一流の経営者に共通する祈りの正体

2024年11月7日(木)10時33分
八木 龍平 (社会心理学者・神社の案内人) *PRESIDENT Onlineからの転載

【稲盛和夫は「おい、神様に祈ったか?」と声をかけた】

「経営の神様」と呼ばれる松下幸之助氏(パナソニックグループ創業者)と稲盛和夫氏(京セラ・KDDI創業者)。経営史に名を残すビジネスパーソン達はいったい何を祈ったのでしょうか?

「おい、神様に祈ったか?」


 

稲盛和夫氏の著書『働き方』(三笠書房)に出てくる稲盛氏の声かけです。まだ創業10年も経たない京セラにIBMから大量受注があった時のことです。IBMの要求水準は当時の京セラの技術水準を大きく上回り、いくら試作品を納めても品質検査で「不良品」と判定され、返品され続けました。

そんなある晩、職場で呆然と立ち尽くし、万策尽きたといった風情で泣く技術者に対し、稲盛氏は思わず「おい、神様に祈ったか?」と声をかけたのです。

稲盛氏の真意は、「人事を尽くし、後はもう神に祈り、天命を待つしか方法はないと言えるほど、すべての力を出し切ったのか。自分の身体が空っぽになるくらい、製品に自分の『思い』を込め、誰にも負けない努力を重ねたのか」(同書より引用)ということでした。

【「力の限り努力しますが、神様もお助けください」】

その技術者は、稲盛氏の言葉で再び気持ちを奮い起こして開発に取り組み、IBMから「合格通知」を受ける製品を完成させました。

このエピソードから、稲盛氏にとって神仏への祈りは、前述のGRIT(グリット)、すなわち「やり抜く力」を付けるためと推測します。人事を尽くしきる力です。

のちに僧侶になるほど仏教に傾倒した稲盛氏ですが、神社参拝にもこだわりがあり、京セラ第2代社長である青山政次氏の著書『心の京セラ二十年』(非売品)よると、初詣は京都の車折神社、八坂神社、伏見稲荷大社に連続して参拝されたようです。

特に車折神社は、当時の稲盛氏の自宅近くにあり、創業して最初のお正月に「一番にお参りしたい」と、元旦午前0時前に稲盛夫妻と青山夫妻の4人が集まりました。そして時計が0時を指した瞬間、稲盛氏と青山氏は2人一緒に鈴を鳴らして拍手を打ち、京セラの発展を祈願したと伝えられています。

稲盛氏は何事も一番が好きで、初詣も一番にお参りして、「自分は力の限り努力しますが、神様もお助けください」と、神様の加護を願ったそうです。

企業経営
ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パートナーコ創設者が見出した「真の成功」の法則
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アップル、新たなサイバー脅威を警告 84カ国のユー

ワールド

イスラエル内閣、26年度予算案承認 国防費は紛争前

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億

ワールド

EU、Xに1.4億ドル制裁金 デジタル法違反
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 7
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 8
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 9
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中