最新記事
ビジネス

自動車とジェネリック医薬品、両業界に共通する「成功を手助けする黒子」の存在

2024年10月11日(金)15時10分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

シュルツが開いた店のビジネスモデルは、彼のイタリアでの体験をシアトルにそのまま再現した(移し替えた)ようなものだった。

シュルツの店の名は「イル・ジョルナーレ」。ミラノで発行されているイタリアの新聞名から取ったものだった。バリスタは白いシャツを着てボウタイを結び、店内のスピーカーからはオペラ音楽が流れており、メニューにはイタリア語でも書かれていた。

数年後、シュルツの元雇用主がいよいよコーヒー豆販売の事業を売却することになったとき、シュルツには買い取るだけの十分な資金ができていた。

そして、オリジナルの「スターバックス」の名の下、シュルツは2つの事業を合併した。

外から見ていると、起業家は天才のように見えるかもしれない。彼らはアイデアの泉で、必要に応じてビジネスアイデアを生み出す尋常ではない能力を有しているように思える。

とはいえ公式に従って考えるようになれば、起業の機会はどこにでも転がっていることが自分でもわかってくるだろう。

ヒット商品を分解してコピーする

今日、私たちが使う医薬品の90パーセント以上がジェネリック医薬品(後発医薬品)だ。すなわち大企業が特許を保有する製造方法に倣って製造された調合薬である。

ジェネリック医薬品には、計り知れない利点がある。これらがなければ、世界中の多くの人にとって、命が助かる医薬品が手の届かないものとなってしまう。

医薬品は、特許が切れればその製法が公開され、他の製薬会社がジェネリック医薬品としてその医薬品を製造できると、たいていの人は考えている。だが、それは稀なケースだ。

多くの場合、製薬会社は自社の製法の公開を避けるため、さまざまな法律や規制を持ち出して抵抗する。オリジナルの製法が公開されて、ジェネリック医薬品が製造されるのは、ごく稀なことである。

それよりもむしろ、ジェネリック医薬品は「デフォーミュレーション」と呼ばれる一連の複雑な実験・分析によって開発されることのほうが多い。デフォーミュレーションと呼ばれるのは、1つの錠剤や丸薬を、最終のフォーミュラから個々の配合成分にまで分解する、通常とは逆手順の作業を行うためだ。

デフォーミュレーションには、長年の教育も莫大な費用のかかるラボも必要ない。世界中には分解・分析で長年の経験を誇る専門ラボが多数あるので、インターネット環境とクレジットカードがあれば誰にでも行える。しかも、分析対象は医薬品に限らない。

こうしたラボに依頼すれば、高級化粧品やシャンプー、フレグランスから塗料や接着剤、洗濯用洗剤に至るまで、驚くほど広範な製品の配合を解明してくれる。

費用は、ほんの2000ドルほどだ。

何十年か前であれば、ヒット商品を分解してその構造を明らかにし、正確な設計図を作成するには、膨大な時間と費用が必要だっただろう。だが、もうそんな必要はない。

企業としては、自分たちの発明がいともたやすくコピーされてしまうのは悔しいだろうが、この事実を受け入れて、もっと賢く対処してきた企業もある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米ハンガリー関係は「黄金時代」とルビオ氏、選挙控え

ビジネス

独VW、28年末までにコスト20%削減を計画=独誌

ワールド

英首相、国防費増額の加速必要 3%目標前倒し検討と

ワールド

ロシア、和平協議で領土問題含む主要議題協議へ=大統
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したスーツドレスの「開放的すぎる」着こなしとは?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    フロリダのディズニーを敬遠する動きが拡大、なぜ? …
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 7
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 10
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中