最新記事
ビジネス

自動車とジェネリック医薬品、両業界に共通する「成功を手助けする黒子」の存在

2024年10月11日(金)15時10分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

すでに人気の商品を別の場所で展開する

サンフランシスコの料理人スティーブ・エルズは、1970年代にメキシコ料理専門店をオープンしようと考えていたが、大繁盛する可能性はかなり低そうだと思った。

ベイエリアにはメキシコ料理店がひしめいていて、恐ろしく競争が激しい。そこで彼は、メキシコ料理のファストフード店を、タコスが比較的珍しい場所にオープンすることを思いついた。デンバーだ。店は「チポトレ」と名づけた。

エルズは、最初からフランチャイズ・チェーンを築こうとしたわけではなかった。ただ単に賃料が払えて、黒字になるレストランをつくろうとしただけだった。しかし、1号店に行列ができたとなれば、いやでもその可能性の大きさがわかる。

エルズのエピソードで注目すべき点は、その成功がある1つの決断から始まったということ。つまり、ある地域で人気を獲得している商品を見つけて、それをまったく別の場所に紹介した、という決断だ。

この手法は、タコス以外にもたくさんのものに応用できるアプローチといえる。

経験豊富な実業家は、チポトレなどのケーススタディからビジネス戦略を学ぶことで、成功事例のブループリント(計画図)のデータベースを頭の中に構築している。

このブループリントのデータベースによって、優れた実業家は機が熟したときにそれを捉えて、現在あるリソース以上に利益を生み出すアイデアの捻出に力を注げる。

チポトレのケーススタディから、野心ある実業家に役立ちそうな、さまざまなヒントを考えてみよう(下の図表参照)。

『リバース思考 超一流に学ぶ「成功を逆算」する方法』

『リバース思考 超一流に学ぶ「成功を逆算」する方法』P.56より

大反対された「スターバックス」

チポトレは、このブループリントを利用して出現した数多くの成長著しいチェーンの1つだが、実は「スターバックス」もそうだ。

1980年代、スターバックスはコーヒー通に豆を販売するだけの小売業者で、店舗数もほんの数店しかなかった。スターバックスにマーケティング・ディレクターとして新たに採用された元ゼロックス営業マンのハワード・シュルツは、あるときミラノを訪れていくつものエスプレッソ・バーを目にした。シュルツはすっかり気に入った。

アメリカにこんな店はない。アメリカでは、味のしないスーパーマーケットのコーヒーや、コーヒーショップとは名ばかりの多少こぎれいな食堂と大差ない店が当たり前だった。

シアトルでなら、コーヒーハウス文化が花開きはしないだろうか?

しかし、スターバックスの経営陣はこのアイデアに興味を示さなかった。彼らはホスピタリティ事業には手を出さないと言って譲らなかったが、シュルツは粘って最終的に同社CEOに試験的に1店舗だけ出すことを認めさせた。そして、これが驚くほどの成功を収めた。

だが、それほどの人気を獲得しても、同社の創業者たちは店舗数を増やすシュルツの計画に断固反対した。

シュルツは仕方なくスターバックスを辞め、自分でエスプレッソ・バーを開いた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

レバノン国連部隊にまたイスラエル軍が発砲、2人負傷

ワールド

南シナ海の平和への中国の努力尊重を、李首相が域外諸

ワールド

ノーベル平和賞、日本被団協に 核廃絶訴える活動を評

ビジネス

英GDP、8月は前月比+0.2% 3カ月ぶりのプラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米経済のリアル
特集:米経済のリアル
2024年10月15日号(10/ 8発売)

経済指標は良好だが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くのアメリカ国民にその実感はない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 2
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはどれ?
  • 3
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた「まさかのもの」とは?
  • 4
    驚愕! 絶壁を手袋や靴も付けず命綱なしで登る「中…
  • 5
    ホームレスたちと河川敷で寿司パーティー、そして「…
  • 6
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決…
  • 7
    東京に逃げ、ホームレスになった親子。母は時々デパ…
  • 8
    南極「終末の氷河」に崩壊の危機、最大3m超の海面上…
  • 9
    世界トップレベルの女子の理数能力を無駄にする、日…
  • 10
    戦術で勝ち戦略で負ける......「作戦大成功」のイス…
  • 1
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 2
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティアラが織りなす「感傷的な物語」
  • 3
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた「まさかのもの」とは?
  • 4
    借金と少子高齢化と買い控え......「デフレ三重苦」…
  • 5
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「…
  • 6
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決…
  • 7
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはど…
  • 8
    アラスカ上空でロシア軍機がF16の後方死角からパッシ…
  • 9
    ウクライナ軍がミサイル基地にもなる黒海の石油施設…
  • 10
    NewJeansミンジが涙目 夢をかなえた彼女を待ってい…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 3
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 4
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 5
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロ…
  • 6
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 7
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 8
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 9
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 10
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中