最新記事
資産運用

エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情

OVERSEAS REAL ESTATE

2024年8月31日(土)15時20分
藤田岳人(本誌記者)

「だが、実際には投資したマンションが建つまで8年かかった」。彼が購入したのはフォレストシティーのマンションではないが、一時は建物が完成しないまま計画が頓挫するのではないかと心配したと言う。「建つ前に支払いをすると割引があるシステムだったので、現地でローンを組んで支払いを済ませていた」

それでもマンションが建ってからは、仲介業者である日本の不動産会社が「細かくケアしてくれる」こともあり、問題なく家賃収入を得ることができている。「購入から10年ほどたって、いま売れば『トントン』くらいの状況だ」


この人物の場合、購入の契約やローンを組む際のやりとりも「不動産会社が大部分をやってくれたので、海外だからといってそれほど難しいとは感じなかった」と話す。「日本の不動産とは違うのは、大使館に手続きに行かなければならなかったことくらい」

だが建設の大幅な遅れや、高速鉄道の計画が不透明になったことなど、海外ならではの事情に振り回された面は否めない。

「中国への強硬姿勢を打ち出していたマハティール政権に政権交代したり、(通貨)リンギットが下落して日本円換算の価値が大きく下がるなどの誤算もあった。東南アジアや中国など、国際ニュースに関心を持ち、詳しくなったのはメリットと言えるかもしれないが......」

純粋な投資と考える人とは違うメリットを見出す人たちも

一方、日本に住みながら投資対象として海外不動産を選んだ人たちと違った事情を持つのは、セカンドハウスや移住先として海外の物件を購入した人たちだ。

1987年に英ロンドンで日本人の投資家や移住者向けにイギリスの不動産を紹介・販売する会社を設立し、現在では賃貸事業も手がける店舗を市内6カ所に持つ「ロンドン-東京プロパティーサービス」の菊地邦夫CEOは言う。

「もともとは自分が自宅としてロンドンで買ったセミデタッチドの『コンバージョンフラット』という大きな一軒家を改装して複数の住宅に区切った形式の住宅が、80年代に大きく値上がりした。これで不動産に興味を持ち、それから28件の投資物件を購入してきた」と言う。

不動産事業としては「コロナの時期以外は売り上げが下がったことがない」というほど、ロンドンで不動産を求める日本人は安定的に推移しているという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

-日産、11日の取締役会で内田社長の退任案を協議=

ビジネス

デフレ判断指標プラス「明るい兆し」、金融政策日銀に

ビジネス

FRB、夏まで忍耐必要も 米経済に不透明感=アトラ

ワールド

トルコ、ウクライナで平和維持活動なら貢献可能=国防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中