組み立てが大変なイケアの家具は満足度が高く、時短になる簡単ケーキミックスは売れなかった理由
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<消費者は自分でつくりあげたものに深い愛着を抱く。賢明な企業はこの自己中心性バイアス=「イケア効果」を活用している。世界的ベストセラー『予想通りに不合理』著者ダン・アリエリーの論考より>
消費者が商品を購入する動機の背景にある科学は、時として直感に反している。
消費者は、楽がいい、手間がかからないほうを好む。例えば家具なら、生産から配送、組み立てまで、メーカー側に全部やってもらいたいはず。あなたはそう思っているかもしれない。
だが、その考え方が間違っている場合が、実は多いのだ。
世界的ベストセラー『予想通りに不合理』(早川書房)の著者で、デューク大学の心理学と行動経済学の教授ダン・アリエリーは、人間は自分でつくりあげたものに深い愛着を持つ「イケア効果」という認知バイアスにしばしば陥ると指摘する。
そこで、このたび発売された『Duke CEマネジメントレビュー』(かんき出版)に掲載されているアリエリー氏の論考から、一部を抜粋して紹介する。
同書の著者はアメリカの名門デューク大学フクア経営大学院の関連組織で、あらゆるレベルのリーダーを育成するためのリーダーシッププログラムを企業に提供している世界有数の教育機関であるDuke コーポレート・エデュケーション。
同書はDuke コーポレート・エデュケーションの執筆陣が寄稿している機関誌「Dialogue」から、特に重要な20本の記事を厳選してまとめたものである。
※同書より抜粋した記事1本目:ECサイトの「カゴ落ち」率は68.8% 顧客に見放される企業と顧客を惹きつける企業の違い
(以下より抜粋)
カスタマイズできることがいかに購買意欲を高めるかを理解するには、人間の心理の、より一層謎めいた部分に、一直線に飛び込んでいかなければならない。
私たち消費者は、あなたが思っているほど不精ではないときもある。
それどころか、かなりの汗や苦労さえ厭わないときもある。
ただし、それはあくまで「自分の『手づくり』」と呼んでいいものであればの話だ。
幼い子がいる大勢の父親たちが行っているであろう、平箱包装された組み立て式家具の大手量販店「イケア」に、私も数年前に初めて買い物に行った。目的は、子どもたちのおもちゃ箱になるような、引き出しつきのチェストだ。
子どもたちがいつも使うものは、あっという間に傷だらけになってしまうのがお約束だから、子ども用の家具に大金を出す気はなかった。
イケアの家具に対して抱いた感覚
だが、購入した平箱包装式のイケア家具が、組み立てにあれほど膨大な時間と労力が必要だということは、まったくの予想外だった。
イケアが、地球上のありとあらゆる言語に対応しなくてすむようにしたと思われる図とイラストしかない組み立て説明書に、自分がどれほど面食らったかいまだに覚えている。
何もかもが、つじつまが合わないように思えた。種類ごとのネジの見分けもつかなければ、部品のいくつかは足りていないようだった。
イケアの家具を組み立てたことがある人ならわかってもらえると思うが、パーツをうっかり逆さまに組み立てて、ずっとあとになって間違いに気づいて目の前が真っ暗になるという事態が、いとも簡単に起きてしまうことを私も身をもって学んだ。
そうして、何段階か前の間違いを直すために、ここまでせっかく組み立てた作品を解体するという作業に、さらに多くの時間を費やすはめになった。