最新記事
ビジネス

なぜ「管理職は罰ゲーム」と言われるようになったのか...「働き損」の職場は、どうすれば変えられる?

2024年6月5日(水)18時57分
flier編集部

──当時の管理職がこうした大変な状況下でもやってこられたのは、なぜでしょうか。

当時は管理職になるプラスの面もありました。1つめは、共働き世帯が一般的になる前、管理職になると家庭でも「うちのお父さんは偉くなった」と尊敬してもらえたことです。男性の場合の話ですが。

2つめは、「油を売るおじさん」や「窓際族」になっていた中高年社員がちゃんと若い人たちをサポートしてくれていたこと。現在はそうした存在がいなくなり、管理職にばかり部下育成の負担がのしかかっています。

3つめは、仕事で傷ついても飲み屋やスナックのように傷を癒やせる場所が職場の外部に存在していたこと。「傷ついた羽をママさんに癒やしてもらったんだ」と昔を懐かしむ声を何人もの人から聞きました。会社の外にも「サポートの場と人」があったからこそやっていけたのです。

だけどいまは、プレイングマネジャーは当たり前、管理職の仕事の質が変わりました。一人あたりのタスク量は増え、業務の変化のスピードも速くなる一方で、コンプライアンスやセキュリティへの対応も求められています。

このように、管理職が大変な状況はここ最近始まったものではなく、もっと根深い問題なのです。それなのに、管理職の罰ゲーム化の原因が、「若者がすぐ仕事をやめてしまうようになり、コンプライアンスが厳しくなって部下とコミュニケーションを取りにくくなったから」という点に矮小化されてしまっているように思います。

──部下とのコミュニケーションの問題よりも本質的な問題に目を向ける必要があるのですね。

いま『不適切にもほどがある!』というテレビドラマが流行っていますね。当時のパワハラやセクハラが「愛があれば大丈夫」と許されてきた文化はあってはならないものですが、あの頃にあった「ちょっとだけうっとうしい、おせっかいな人間関係」の中にもヒントがあると思います。

一方で、上司が子どもを育てるように部下を育てようとする気持ちをもてなくなっている面もあります。従業員エンゲージメントが大事と言われますが、「会社のためにがんばろう」という共通の思いをもてるようになるには、組織の構造や仕組みを変えるしかないと考えています。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ドイツ銀、28年にROE13%超目標 中期経営計画

ビジネス

米建設支出、8月は前月比0.2%増 7月から予想外

ビジネス

カナダCPI、10月は前年比+2.2%に鈍化 ガソ

ワールド

EU、ウクライナ支援で3案提示 欧州委員長「組み合
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中