なぜ「管理職は罰ゲーム」と言われるようになったのか...「働き損」の職場は、どうすれば変えられる?
──当時の管理職がこうした大変な状況下でもやってこられたのは、なぜでしょうか。
当時は管理職になるプラスの面もありました。1つめは、共働き世帯が一般的になる前、管理職になると家庭でも「うちのお父さんは偉くなった」と尊敬してもらえたことです。男性の場合の話ですが。
2つめは、「油を売るおじさん」や「窓際族」になっていた中高年社員がちゃんと若い人たちをサポートしてくれていたこと。現在はそうした存在がいなくなり、管理職にばかり部下育成の負担がのしかかっています。
3つめは、仕事で傷ついても飲み屋やスナックのように傷を癒やせる場所が職場の外部に存在していたこと。「傷ついた羽をママさんに癒やしてもらったんだ」と昔を懐かしむ声を何人もの人から聞きました。会社の外にも「サポートの場と人」があったからこそやっていけたのです。
だけどいまは、プレイングマネジャーは当たり前、管理職の仕事の質が変わりました。一人あたりのタスク量は増え、業務の変化のスピードも速くなる一方で、コンプライアンスやセキュリティへの対応も求められています。
このように、管理職が大変な状況はここ最近始まったものではなく、もっと根深い問題なのです。それなのに、管理職の罰ゲーム化の原因が、「若者がすぐ仕事をやめてしまうようになり、コンプライアンスが厳しくなって部下とコミュニケーションを取りにくくなったから」という点に矮小化されてしまっているように思います。
──部下とのコミュニケーションの問題よりも本質的な問題に目を向ける必要があるのですね。
いま『不適切にもほどがある!』というテレビドラマが流行っていますね。当時のパワハラやセクハラが「愛があれば大丈夫」と許されてきた文化はあってはならないものですが、あの頃にあった「ちょっとだけうっとうしい、おせっかいな人間関係」の中にもヒントがあると思います。
一方で、上司が子どもを育てるように部下を育てようとする気持ちをもてなくなっている面もあります。従業員エンゲージメントが大事と言われますが、「会社のためにがんばろう」という共通の思いをもてるようになるには、組織の構造や仕組みを変えるしかないと考えています。