最新記事
ビジネス

なぜ「管理職は罰ゲーム」と言われるようになったのか...「働き損」の職場は、どうすれば変えられる?

2024年6月5日(水)18時57分
flier編集部
管理職の「罰ゲーム化」は本当か

aslysun/Shutterstock

<自分の権力に固執して自分たちの得になる意思決定ばかりするヒエラルキー最上位層による「ジジイの壁」が、現場で働く人の意欲を奪っている>

「仕事に熱意をもっている社員はたった5%で、世界145カ国中最下位」。何が日本人から働く意欲を奪っているのか? 健康社会学者である河合薫さんがその構造上の問題を解き明かしていくのが『働かないニッポン』(日本経済新聞出版)です。

なぜ日本は「働き損社会」になっているのでしょうか? 「管理職=罰ゲーム」は本当なのか? 働きがいを得られるようにするために、河合さんの考える処方箋とは何なのかをお聞きします。(※この記事は、本の要約サービス「flier(フライヤー)」からの転載です)

日本で「仕事への熱意を示す社員」はわずか5%という衝撃の事実

──『働かないニッポン』の執筆された動機は何でしたか。

本書を書いたのは、「働き損社会」の構造上の問題を明らかにしながら、「働くことはおもしろいこと」というのを伝えたかったからです。この数年、日本は「衰退途上国」と呼ばれるほど、世界から置いてきぼりにされています。ギャラップ社の「グローバル職場環境調査」(2022年)によると、日本は仕事への熱意を示す社員が5%にとどまり、世界最下位だったそうです。この事実はあまりにも衝撃的でした。

5%という数字は、個々人の問題というよりも、環境の問題です。私の専門である健康社会学では、「人は環境でつくられ、人は環境を変えることができる」という前提で、人と環境の相互作用に注目します。つまり、個人は環境の影響を受ける存在であると。熱意は「人の役に立って感謝される」「自分の存在を認めてもらえる」といった環境があってはじめて生まれるものなのです。

私自身、ANAが国際線に就航した際の国際線キャビンアテンダント(CA)として働いていたとき、仕事のおもしろさに気づけたのは、先輩やお客様など自分を取り巻く環境のおかげでした。工夫してお客様の役に立てたり、先輩からフィードバックをもらったりするうちに仕事がおもしろくなって、「もっと自分の能力を発揮したい」と思うようになりました。

働くことへの意欲がわかないのは、「仕事がおもしろくない状況」になっていることに尽きます。それが会社や上司のせいにされる風潮もありますが、本来は社会構造上の問題です。その原因の多くは、社会構造に責任をもつべきヒエラルキー最上位層による「ジジイの壁」にあります。

働かないニッポン
 著者:河合薫
 出版社:日本経済新聞出版
 要約を読む

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中