最新記事
健康

ハーバード大学准教授が語る「メンタル危機」になる前のセルフケア...認知療法で使われる技術とは?

2024年5月30日(木)11時13分
flier編集部

「分断の向こう側」に手を差し伸べようと思える原動力とは?

──内田さんは、研究テーマである「再評価」の重要性や「差別と分断を乗り越えるための方法」について、幅広く講演や発信をしています。内田さんがこうした活動を続けている原動力は何でしょうか。

根っこには生まれもったものがあると思います。子どもの頃から、誰かがアンフェアな状況にあると気になって仕方なくて。いじめられっこがいたら一緒に遊ぼうと誘っていたし、目の前でいじめが起きていたら止めに入っていました。

ただ、人は嫌な気持ちが続いていると、他者に優しくできないんですよね。日本に住んでいた当時は、フェミニズムに関する問題提起をしていましたが、批判されて嫌な思いをすることも多く、余裕をあまり持てなかった。もちろんアメリカでもジェンダーの問題はあるものの、私がいま、分断を超えるような会話ができているのは、日本を出て、総合的に女性として蔑ろに扱われたと思う体験をすることが日本にいた時と比べるとずっと少ない環境にいることも大きいと思います。

そのうえで、分断の向こう側に手を差し伸べようという活動に大きな影響を与えている経験は2つあります。

1つは、子育てです。3人息子がいますが、思い通りにいかないことの連続。一人ひとり視点も幸せの感じ方も違います。一家の中で彼らの多様性をマネジメントしつつ、自分とは違う感覚に出合い、すばらしいなと感動する機会に恵まれています。

2つめは、メンタルに苦しむお子さんを抱える親御さんと、医師として接する機会です。毎日たくさんのご家庭の親御さんとお話をして、その頑張りや苦しみを聞いています。例えば、その中でお子さんに薬を処方する際には、その科学的な背景や、効果が出る場合とそうでない場合があるという点を説明するのですが、親御さんの不安は手に取るようにわかります。何が一番よいか言い切れない状況でも、一緒に選択して、その後の結果に応じて調整していこうと一緒に歩んでいく。そのプロセスを通じて、さまざまな価値観にふれられ、人間の理解につながっています。

こうした子育てと、親御さんたちとの対話を通じて、分断の反対側にいるような、正反対の人たちの感じ方にも思いを馳せる姿勢を培ってきたと思います。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

トヨタ、中国生産30年に60万台以上積み増し、現地

ビジネス

中国10月CPI、前年比+0.3% 4カ月ぶりの低

ワールド

トランプ氏刑事手続き、連邦地裁が延期認める 議会襲

ワールド

米司法省、トランプ氏暗殺計画巡りイラン在住の男起訴
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米大統領選と日本経済
特集:米大統領選と日本経済
2024年11月 5日/2024年11月12日号(10/29発売)

トランプ vs ハリスの結果次第で日本の金利・為替・景気はここまで変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「遮熱・断熱効果が10年持続」 窓ガラス用「次世代型省エネコーティング」で地球規模の省電力を目指すビルズアート
  • 2
    「歌声が聞こえない」...ライブを台無しにする絶叫ファンはK-POPの「掛け声」に学べ
  • 3
    ウクライナ軍ドローン、1000キロ離れたロシア拠点に突っ込む瞬間映像...カスピ海で初の攻撃
  • 4
    ハリス氏惨敗の背景に「アメリカ中流階級の生活苦の…
  • 5
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 6
    小児性愛者エプスタイン、23歳の女性は「自分には年…
  • 7
    ネアンデルタール人「絶滅」の理由「2集団が互いに無…
  • 8
    世界中で「キモノ」が巻き起こしたセンセーション...…
  • 9
    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはど…
  • 1
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウクライナ軍と北朝鮮兵が初交戦
  • 2
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大人気」の動物、フィンランドで撮影に成功
  • 3
    予算オーバー、目的地に届かず中断...イギリス高速鉄道計画が迷走中
  • 4
    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…
  • 5
    「歌声が聞こえない」...ライブを台無しにする絶叫フ…
  • 6
    「トイレにヘビ!」家の便器から現れた侵入者、その…
  • 7
    「遮熱・断熱効果が10年持続」 窓ガラス用「次世代…
  • 8
    「ダンスする銀河」「宙に浮かぶ魔女の横顔」NASAが…
  • 9
    後ろの女性がやたらと近い...投票の列に並ぶ男性を困…
  • 10
    投票日直前、トランプの選挙集会に異変! 聴衆が激…
  • 1
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 2
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 3
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 4
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 5
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 8
    予算オーバー、目的地に届かず中断...イギリス高速鉄…
  • 9
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 10
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中