最新記事
都市農業

吉田正尚所属、MLBボストン・レッドソックス本拠地の「サステナブル」な新名所とは?

FARMING IN THE CITY

2024年4月5日(金)15時00分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

未来に向けた「橋頭堡」

バンヘーゼルは事業の参考にするため、海外に目を向けた。19年には、5週間の国際交流プログラムの一環としてスウェーデン、ドイツ、フランスの8都市で50の団体と会い、最適な事例を集めた。

ベルリンでは約65平方キロの公共公園スペースを市民農園に使っていた。スウェーデンのイエーテボリとマルメは市有地に温室とフェンス、給水設備を設置して都市型農家の新規参入を促し、今では2850ヘクタールの土地に200の農場が出来た。パリでは100ヘクタールの屋上や壁面などを緑地に転換。約3分の1を都市農業に割り当てた結果、19年までに60以上の農業団体が誕生した。

世界人口に占める都市住民の割合は50年までに50%から70%に増加するとみられ、都市農業が注目を集めている。世界190以上の都市が、持続可能で復元力に富む都市食料システムの構築を目指す都市食料政策ミラノ協定(MUFPP)に署名している。

ブルキナファソの都市ボボ・ディウラッソでは、1991~2013年に地表面温度が年平均約6%上昇した。市当局はその対策として、都市の空き地でアグロフォレストリー(森林農業)事業を推進。果樹や野菜を植え、参加世帯に収穫させている。カナダのトロントでは「樹冠倍増計画」の一環として、家庭菜園だけでなく地域の果樹園や農園にも資金を援助している。

グリーンシティーグロワーズの現経営トップであるグララートは、ボストン都市圏出身で商業的農業の経験がある。アリゾナ砂漠の高地で大規模なリンゴ園を経営していたが、故郷に戻ろうと考えていた15年にグリーンシティーグロワーズを知り、投資を決意。やがて経営トップに就任すると、投資家を招き、事業拡大に乗り出した(バンヘーゼルは13年以上事業に携わった後、21年に株式を売却)。

分散型食料生産システムが農産物の主要供給源となり、全米の都市生活者が自分たちで自分の食料を育てられるようになる──グリーンシティーグロワーズはそんな未来に向けた「橋頭堡(きょうとうほ)」だと、グララートは考えている。

「グリーンシティーグロワーズは無数の人々とつながっている。毎年数万人が私たちの農園で働いている。私たちは毎週200カ所以上の農園に教育係を派遣し、有機農園と人々をつないでいる」

このトレンドが続けば、都市農園は今後数年、米食品産業のグリーン化に今以上に貢献できる可能性がある。「分散型農業は将来、さらに大きな役割を果たす」と、グララートは言う。「どんな形になるのか、まだ正確には分からない。ともかく、消費者と社会はそれを求めている」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

クックFRB理事の弁護団、住宅ローン詐欺疑惑に反論

ビジネス

日経平均は続落で寄り付く、5万円割れ 米株安の流れ

ワールド

国連安保理、トランプ氏のガザ計画支持する米決議案を

ビジネス

米ボーイング、エミレーツから380億ドルの受注 ド
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中