最新記事
都市農業

吉田正尚所属、MLBボストン・レッドソックス本拠地の「サステナブル」な新名所とは?

FARMING IN THE CITY

2024年4月5日(金)15時00分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

newsweekjp_20240405042919.jpg

「野菜を育てるのは命を育てること」と語る共同創業者のバンヘーゼル CHRISTOPHER EVANSーMEDIANEWS GROUPーBOSTON HERALD/GETTY IMAGES

フェンウェイ・パークの屋上農園は、同社が掲げる使命、すなわち植物の好ましい力を都市住民に知ってもらうことに沿ったものと言える。

「毎年膨大な数の観客がこのスタジアムを訪れる」と、社長のクリス・グララートは言う。「屋上農園を実際に見て驚くことが素晴らしい学習体験になる。こんなことが可能なのだと知る機会になるから」

現代農業で失われたもの

グリーンシティーグロワーズの始まりは2008年。当時24歳だった共同創業者のジェシー・バンヘーゼルは、テレビのリアリティー番組の制作アシスタントをしていたが、もっとやりがいのある仕事に就きたいと考え、仕事を辞めて親元に戻っていた。

するとある日、もう1人の共同創業者である大学時代の友人ガブリエル・エルデ・コーエンから電話があった。「裏庭農園ビジネス」を一緒に立ち上げないかとのことで、マイケル・ポーランの著書『雑食動物のジレンマ』(邦訳・東洋経済新報社)を薦められた。

この本がバンヘーゼルの人生を変えた。ポーランによれば、第2次大戦後に、大型トラクターや合成窒素肥料など数々の技術的イノベーションに牽引されて現代農業が台頭したことにより、農業生産が飛躍的に増加した。ただし、現代農業の発展は化石燃料や農薬に大きく依存する中央集権的な食料生産につながり、消費者を生産地から遠ざけることにもなった。

「オーガニック食品を食べることの価値を理解してもらうというアイデアは、とても魅力的だった。私たちにとっても私たちの社会にとってもいいことだから」と、バンヘーゼルは本誌に語った。

「広いスペースがあるのに全く活用されていないという気付きもそう。野菜を育てるのは命を育てること、人々が生きるために消費可能なものを育てること。リアリティー番組の仕事とは正反対だった」

バンヘーゼルとエルデ・コーエンは、チラシを配り、地元の農産物市場にテーブルを並べ始めた。裏庭や車道、農道、市街地の土地などの小さなスペースにプランターや苗床の設置を提案し、ほぼ1週間ごとに(収穫物のサイズにより異なる)手入れをした。

地元のグルメ雑誌で特集されたことをきっかけに、スタッフの福利厚生の一環として農園を始めたいと考えていた医療保険会社ハーバード・ピルグリム・ヘルスケアやレストラン・チェーンのBグッドなど、最初の企業クライアントの注目を集めた。14年には、新興企業支援プログラムを通じて知り合ったレッドソックスの共同オーナー、リンダ・ピズッティ・ヘンリーに屋上農園のアイデアを売り込んだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

利上げ含め金融政策の具体的手法は日銀に委ねられるべ

ワールド

香港火災、警察が建物の捜索進める 死者146人・約

ワールド

ホンジュラス大統領選、トランプ氏支持の右派アスフラ

ビジネス

債券市場の機能度DI、11月はマイナス24 2四半
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業界を様変わりさせたのは生成AIブームの大波
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 5
    「世界で最も平等な国」ノルウェーを支える「富裕税…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中