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FARMING IN THE CITY

2024年4月5日(金)15時00分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

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「野菜を育てるのは命を育てること」と語る共同創業者のバンヘーゼル CHRISTOPHER EVANSーMEDIANEWS GROUPーBOSTON HERALD/GETTY IMAGES

フェンウェイ・パークの屋上農園は、同社が掲げる使命、すなわち植物の好ましい力を都市住民に知ってもらうことに沿ったものと言える。

「毎年膨大な数の観客がこのスタジアムを訪れる」と、社長のクリス・グララートは言う。「屋上農園を実際に見て驚くことが素晴らしい学習体験になる。こんなことが可能なのだと知る機会になるから」

現代農業で失われたもの

グリーンシティーグロワーズの始まりは2008年。当時24歳だった共同創業者のジェシー・バンヘーゼルは、テレビのリアリティー番組の制作アシスタントをしていたが、もっとやりがいのある仕事に就きたいと考え、仕事を辞めて親元に戻っていた。

するとある日、もう1人の共同創業者である大学時代の友人ガブリエル・エルデ・コーエンから電話があった。「裏庭農園ビジネス」を一緒に立ち上げないかとのことで、マイケル・ポーランの著書『雑食動物のジレンマ』(邦訳・東洋経済新報社)を薦められた。

この本がバンヘーゼルの人生を変えた。ポーランによれば、第2次大戦後に、大型トラクターや合成窒素肥料など数々の技術的イノベーションに牽引されて現代農業が台頭したことにより、農業生産が飛躍的に増加した。ただし、現代農業の発展は化石燃料や農薬に大きく依存する中央集権的な食料生産につながり、消費者を生産地から遠ざけることにもなった。

「オーガニック食品を食べることの価値を理解してもらうというアイデアは、とても魅力的だった。私たちにとっても私たちの社会にとってもいいことだから」と、バンヘーゼルは本誌に語った。

「広いスペースがあるのに全く活用されていないという気付きもそう。野菜を育てるのは命を育てること、人々が生きるために消費可能なものを育てること。リアリティー番組の仕事とは正反対だった」

バンヘーゼルとエルデ・コーエンは、チラシを配り、地元の農産物市場にテーブルを並べ始めた。裏庭や車道、農道、市街地の土地などの小さなスペースにプランターや苗床の設置を提案し、ほぼ1週間ごとに(収穫物のサイズにより異なる)手入れをした。

地元のグルメ雑誌で特集されたことをきっかけに、スタッフの福利厚生の一環として農園を始めたいと考えていた医療保険会社ハーバード・ピルグリム・ヘルスケアやレストラン・チェーンのBグッドなど、最初の企業クライアントの注目を集めた。14年には、新興企業支援プログラムを通じて知り合ったレッドソックスの共同オーナー、リンダ・ピズッティ・ヘンリーに屋上農園のアイデアを売り込んだ。

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