「読者が選ぶビジネス書グランプリ」第1位に、「お金には価値がない」と訴える本が選ばれたワケ
なんでも「お金が解決してくれる」と思うのは危険
お金のことを過信しちゃいけないんです。本当は無力なんです。たとえば数年前に、二酸化炭素を削減するために30年で1京円くらい必要になるという試算が出た。そこで「1京円をどう調達するんだ」という話になったのですが、そもそも調達以前に1京円払ってそういうことをやってくれる人たちが存在しないと無理ですよね。
あと、投資でお金を増やそうとしている人だけいても、経済は成長しません。その資金を受け取って、生活が豊かになるモノやサービスを作る人たちの存在が必要です。アメリカ経済が成長したのは投資家が育ったからじゃなくて、iPhoneとかGoogleとかを作ろうと挑戦する人たちがいたからです。いまの日本はそうしたものをアメリカから買っている状態です。
「お金が問題を解決してくれる」という期待が強すぎるのは、非常に危険だと思っています。学校の金融教育でそれをやってしまうと、子どもたちは「投資はお金を増やす」ことだと思っちゃう。そして、おいしいお寿司を食べたりiPhoneを買ったりするためには、お金を増やす必要があると考える。みんながみんなそう考えるのは非常に危険です。
投資される側に回って、寿司屋を始めたり、iPhoneを作ろうとしたりする人が育たないと、実は社会は豊かにならないんです。
だからいま「お金の増やし方」的な本が多いなかでこの本を選んでいただけたというのは、希望がもてるなと思いました(笑)。
──これから本書を読む方にメッセージをお願いします。
見た目は中高生向けですが、ビジネスパーソンにも読んでもらいたいですね。
お金は力強いものです。だけど、それを信じていると大事なことを忘れてしまうので、「お金はすごい。しかし、お金に負けるな!」でしょうか。これは、この小説を読んでくださった糸井重里さんが言ってたんですけどね(笑)。
お金は道具ですから、お金に振り回されないでほしいと思います。
仲間を増やすことが大事ですし、これからもそれをうまく伝えたいですね。若い人たちが未来をつくっていくのに参考になるようなものを書いていけたらいいなと思っています。
『きみのお金は誰のため』
著者:田内学
出版社:東洋経済新報社
要約を読む
『お金のむこうに人がいる』
著者:田内学
出版社:ダイヤモンド社
要約を読む
田内学(たうち まなぶ)
1978年生まれ。東京大学工学部卒業。同大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。
2003年ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。以後16年間、日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事。日本銀行による金利指標改革にも携わる。
2019年に退職してからは、佐渡島庸平氏のもとで修行し、執筆活動を始める。著書に『お金のむこうに人がいる』(ダイヤモンド社)、高校の社会科教科書『公共』(共著、教育図書)、『10才から知っておきたい 新しいお金のはなし』(監修、ナツメ社)などがある。『ドラゴン桜2』(講談社)、『インベスターZ 番外編「人生を変える!令和の投資教育」』(コルク)でも監修協力。
お金の向こう研究所代表。社会的金融教育家として、学生・社会人向けにお金についての講演なども行う。
インスタグラム(@tauchimnb)やnote(https://note.com/mnbtauchi/)でも、お金や経済の情報を発信している。
flier編集部
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