最新記事
経済

「読者が選ぶビジネス書グランプリ」第1位に、「お金には価値がない」と訴える本が選ばれたワケ

2024年4月9日(火)17時17分
flier編集部

なんでも「お金が解決してくれる」と思うのは危険

お金のことを過信しちゃいけないんです。本当は無力なんです。たとえば数年前に、二酸化炭素を削減するために30年で1京円くらい必要になるという試算が出た。そこで「1京円をどう調達するんだ」という話になったのですが、そもそも調達以前に1京円払ってそういうことをやってくれる人たちが存在しないと無理ですよね。

あと、投資でお金を増やそうとしている人だけいても、経済は成長しません。その資金を受け取って、生活が豊かになるモノやサービスを作る人たちの存在が必要です。アメリカ経済が成長したのは投資家が育ったからじゃなくて、iPhoneとかGoogleとかを作ろうと挑戦する人たちがいたからです。いまの日本はそうしたものをアメリカから買っている状態です。

「お金が問題を解決してくれる」という期待が強すぎるのは、非常に危険だと思っています。学校の金融教育でそれをやってしまうと、子どもたちは「投資はお金を増やす」ことだと思っちゃう。そして、おいしいお寿司を食べたりiPhoneを買ったりするためには、お金を増やす必要があると考える。みんながみんなそう考えるのは非常に危険です。

投資される側に回って、寿司屋を始めたり、iPhoneを作ろうとしたりする人が育たないと、実は社会は豊かにならないんです。

だからいま「お金の増やし方」的な本が多いなかでこの本を選んでいただけたというのは、希望がもてるなと思いました(笑)。

──これから本書を読む方にメッセージをお願いします。

見た目は中高生向けですが、ビジネスパーソンにも読んでもらいたいですね。

お金は力強いものです。だけど、それを信じていると大事なことを忘れてしまうので、「お金はすごい。しかし、お金に負けるな!」でしょうか。これは、この小説を読んでくださった糸井重里さんが言ってたんですけどね(笑)。

お金は道具ですから、お金に振り回されないでほしいと思います。

仲間を増やすことが大事ですし、これからもそれをうまく伝えたいですね。若い人たちが未来をつくっていくのに参考になるようなものを書いていけたらいいなと思っています。

きみのお金は誰のため
 著者:田内学
 出版社:東洋経済新報社
 要約を読む

お金のむこうに人がいる
 著者:田内学
 出版社:ダイヤモンド社
 要約を読む


『きみのお金は誰のため』著者・田内学氏

田内学(たうち まなぶ)

1978年生まれ。東京大学工学部卒業。同大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。

2003年ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。以後16年間、日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事。日本銀行による金利指標改革にも携わる。

2019年に退職してからは、佐渡島庸平氏のもとで修行し、執筆活動を始める。著書に『お金のむこうに人がいる』(ダイヤモンド社)、高校の社会科教科書『公共』(共著、教育図書)、『10才から知っておきたい 新しいお金のはなし』(監修、ナツメ社)などがある。『ドラゴン桜2』(講談社)、『インベスターZ 番外編「人生を変える!令和の投資教育」』(コルク)でも監修協力。

お金の向こう研究所代表。社会的金融教育家として、学生・社会人向けにお金についての講演なども行う。

インスタグラム(@tauchimnb)やnote(https://note.com/mnbtauchi/)でも、お金や経済の情報を発信している。

◇ ◇ ◇


flier編集部

本の要約サービス「flier(フライヤー)」は、「書店に並ぶ本の数が多すぎて、何を読めば良いか分からない」「立ち読みをしたり、書評を読んだりしただけでは、どんな内容の本なのか十分につかめない」というビジネスパーソンの悩みに答え、ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。

通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されており、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。

このほか、オンライン読書コミュニティ「flier book labo」の運営など、フライヤーはビジネスパーソンの学びを応援しています。

flier_logo_nwj01.jpg

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

12月FOMCで利下げ見送りとの観測高まる、9月雇

ビジネス

米国株式市場・序盤=ダウ600ドル高・ナスダック2

ビジネス

さらなる利下げは金融安定リスクを招く=米クリーブラ

ビジネス

米新規失業保険申請、8000件減の22万件 継続受
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中