最新記事
技術開発

光を「自在に操作」し、対象物ごとの明るさ調整も可能 マイクロLED活用の次世代照明器具をパナソニックが発表

2024年3月19日(火)11時46分
酒井理恵
Panasonic次世代照明器具

動的な光で、誘目・誘導や揺らぎの演出も可能

<明るさを得るだけでなく、「空間演出」の役割をより求められるようになった照明器具。パナソニックと日亜化学工業が次世代照明器具の技術発表を行った>

照明の役割は単に部屋を明るくすることだけではない。非常時の安全・安心を確保する避難誘導、避難所における被災者のストレス軽減、省電力化による地球環境保護、観光資源の価値をさらに高める空間演出などなど......。社会環境やニーズの変化とともに、求められる役割は多様化している。

「光」の技術を通して人々の生活に新たな価値を創出するため、2024年3月7日、マイクロLED を活用した次世代照明器具の技術発表会が開催された。

マイクロLEDとは100μm(マイクロメートル)角以下の微細なLED素子を個別配置し、高精細・高輝度を実現する技術のこと。髪の毛よりも小さな径のLED素子を約1万6000個実装したピクセル光源「μPLS(micro Pixel Light Source)」を開発したのは、LED・半導体レーザー・リチウムイオン電池材料を中心とした電子部品・材料メーカーである日亜化学工業株式会社(徳島県阿南市)だ。

このμPLSにパナソニック株式会社エレクトリックワークス社の照明制御技術や高速信号処理技術などを組み合わせた照明器具は、2025年以降の製品化が予定されている。

newsweekjp_20240314114411.jpg

次世代照明器具の特徴は大きく2つ。1つは、1台で光を自由に変えたり動かしたりできること、もう1つは、複雑な光を簡単に楽しく扱えること。これまでは照らす場所に応じて複数台の照明器具を準備する必要があり、施工の手間がかかることや空間が雑然としがちなことがネックになっていた。今回発表された次世代照明器具では、光の形や明るさを個別に変え、1台で複数の対象物を照らすことが可能になる。

想定される利用シーンは、ビルのエントランスやホテル、博物館、イベント会場など。さらに通常時、イベント開催時、災害時と、同一空間で状況に最も適した光で空間を照らすといった使い方も考えられる。

操作はスマートフォンやタブレットなどの端末からウェブアプリケーションに接続して行うことが想定されており、自分の手で丸や四角形、文字を描くなど、直観的な光の操作が可能だ。「この時の反応速度が鈍いとユーザーは大きなストレスを感じるため、長年の照明事業で培った高速信号処理技術などを活用している。単なる作業に留まらず、光を操作する体験を楽しんでほしい」とパナソニック エレクトリックワークス社の山内健太郎氏は言う。

newsweekjp_20240314114452.jpg

無線でつながったタブレットで、簡単に光の形を操作することも

これまで複数台必要だった照明器具の数が減れば、資源の節約になる。さらにマイクロLEDを活用した次世代照明器具は、明るい映像を得るために高出力の光源を必要とするプロジェクターと違い、必要なLEDのみを点灯させ局所的に照度を高めることができるので光の利用効率が良く、発熱量や電力消費を抑えて環境負荷軽減にもつながることが期待されている。

想定価格は20~50万円。今年度中に実証実験を数回行い、開発が進められる予定だ。

ニューズウィーク日本版 「外国人問題」徹底研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年1月27号(1月20日発売)は「『外国人問題』徹底研究」特集。「外国人問題」は事実か錯覚か。移民/不動産/留学生/観光客/参政権/社会保障/治安――7つの争点を国際比較で大激論

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、AIモデル構築に友好国と戦闘データ共有

ワールド

IEEPA根拠の関税、米貿易課題に「最も適切」=U

ビジネス

米商務長官「金利高すぎる」、第1四半期成長率は5%

ワールド

中国副首相、貿易黒字懸念の払拭狙う 「中国は脅威で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」の写真がSNSで話題に、見分け方「ABCDEルール」とは?
  • 4
    「耳の中に何かいる...」海で男性の耳に「まさかの生…
  • 5
    「死ぬところだった...」旅行先で現地の子供に「超危…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    トランプが「NATOのアメリカ離れ」を加速させている…
  • 8
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 9
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 10
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 8
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 9
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中