光を「自在に操作」し、対象物ごとの明るさ調整も可能 マイクロLED活用の次世代照明器具をパナソニックが発表
動的な光で、誘目・誘導や揺らぎの演出も可能
<明るさを得るだけでなく、「空間演出」の役割をより求められるようになった照明器具。パナソニックと日亜化学工業が次世代照明器具の技術発表を行った>
照明の役割は単に部屋を明るくすることだけではない。非常時の安全・安心を確保する避難誘導、避難所における被災者のストレス軽減、省電力化による地球環境保護、観光資源の価値をさらに高める空間演出などなど......。社会環境やニーズの変化とともに、求められる役割は多様化している。
「光」の技術を通して人々の生活に新たな価値を創出するため、2024年3月7日、マイクロLED を活用した次世代照明器具の技術発表会が開催された。
マイクロLEDとは100μm(マイクロメートル)角以下の微細なLED素子を個別配置し、高精細・高輝度を実現する技術のこと。髪の毛よりも小さな径のLED素子を約1万6000個実装したピクセル光源「μPLS(micro Pixel Light Source)」を開発したのは、LED・半導体レーザー・リチウムイオン電池材料を中心とした電子部品・材料メーカーである日亜化学工業株式会社(徳島県阿南市)だ。
このμPLSにパナソニック株式会社エレクトリックワークス社の照明制御技術や高速信号処理技術などを組み合わせた照明器具は、2025年以降の製品化が予定されている。
次世代照明器具の特徴は大きく2つ。1つは、1台で光を自由に変えたり動かしたりできること、もう1つは、複雑な光を簡単に楽しく扱えること。これまでは照らす場所に応じて複数台の照明器具を準備する必要があり、施工の手間がかかることや空間が雑然としがちなことがネックになっていた。今回発表された次世代照明器具では、光の形や明るさを個別に変え、1台で複数の対象物を照らすことが可能になる。
想定される利用シーンは、ビルのエントランスやホテル、博物館、イベント会場など。さらに通常時、イベント開催時、災害時と、同一空間で状況に最も適した光で空間を照らすといった使い方も考えられる。
操作はスマートフォンやタブレットなどの端末からウェブアプリケーションに接続して行うことが想定されており、自分の手で丸や四角形、文字を描くなど、直観的な光の操作が可能だ。「この時の反応速度が鈍いとユーザーは大きなストレスを感じるため、長年の照明事業で培った高速信号処理技術などを活用している。単なる作業に留まらず、光を操作する体験を楽しんでほしい」とパナソニック エレクトリックワークス社の山内健太郎氏は言う。
これまで複数台必要だった照明器具の数が減れば、資源の節約になる。さらにマイクロLEDを活用した次世代照明器具は、明るい映像を得るために高出力の光源を必要とするプロジェクターと違い、必要なLEDのみを点灯させ局所的に照度を高めることができるので光の利用効率が良く、発熱量や電力消費を抑えて環境負荷軽減にもつながることが期待されている。
想定価格は20~50万円。今年度中に実証実験を数回行い、開発が進められる予定だ。
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