最新記事
資産運用

「月5万」の積立投資は、30年後いくらに? 新NISA時代に「個人」が知るべき資産とリスクの基礎知識

A New Era of Investing

2023年12月27日(水)18時20分
加谷珪一(経済評論家)

231205P20_HKI_03v2.jpg

日本株のほかにも、違った特徴を持つさまざまな投資対象がある。例えば、実物資産である金 LEONHARD FOEGERーREUTERS

例えば、まとまった額の退職金を手にしている高齢者の場合、インフレで資産が目減りしないよう、国債や優良企業の社債に投資するというのは有益な選択肢となり得る。だが、インフレ率を大きく上回るような利回りの債券に投資することで、積極的に資産形成したいとなると話は変わってくる。投資には常にリスクが付きものであり、利回りが高いということは発行体(社債など発行する企業などのこと)が倒産するリスクが高いことを意味している。

5%のインフレが起こっているときに、それを大きく上回る利回り(例えば10%や15%など)を債券で得ようとすると、過剰なリスクを取ってしまう危険性がある。インフレ率をはるかに超える利回りを提示する債券やそれを組み合わせた投資信託の選択はあまりおすすめできない。

インフレが進む時代には、不動産に加えて金への投資も有益とされる。確かに金も有力なインフレヘッジ手段だが、不動産と同様、実物資産として投資するのは、ある程度、資産を構築してからにすべきだろう。

株式や不動産とは異なり、金はそれ自体が何か利益を生み出すものではない。金は工業用としても使われるが、毎年、一定量が消費されていくので工業需要が金価格を変動させているわけではない。投資用の金というのは、多くの人が「金には価値がある」と思っていることだけが価値の源泉であり、収益性のある商品ではないという点に注意が必要だ。

加えて言うと、金は価値を生み出さないどころか、持っているだけでコストがかかるので、単純収益はマイナスになる。金塊を自身で保管する場合には保管費用がかかるし、金ETFなどの形で保有するにしても、運用会社が保管コストを負担する必要があるので、金の価格に変動がない場合、ETFの時価総額はごくわずかだが減少していく。

年代による投資法の違いは?

インフレ時には金は大きく値を上げるが、インフレが一段落すると価格が暴落することも少なくない。一定以上の資産を持つ投資家であれば、リスクヘッジの手段としてポートフォリオの一部を金にすることは合理的だが、全体の資産額が小さい段階で、高い割合を金に振り分けるのはやめたほうがよいだろう。

株式を中心に長期保有する投資スタイルは、多くの人にとって汎用的といえるが、年齢によって多少、銘柄の選定基準が変わってくる。まだ若く、今後30年程度の期間、投資を継続できる人は、基本的に内外の株式を中心とした組み合わせで問題ない。仮に下落相場になっても5年から10年耐えれば、再び上昇相場となり、最終的な残高は増えていく。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

欧州評議会、ウクライナ損害賠償へ新組織 創設案に3

ビジネス

米雇用、11月予想上回る+6.4万人 失業率は4年

ワールド

ハセット氏、FRBの独立性強調 「大統領に近い」批

ビジネス

米企業在庫9月は0.2%増、予想を小幅上回る
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中