最新記事
資産運用

「月5万」の積立投資は、30年後いくらに? 新NISA時代に「個人」が知るべき資産とリスクの基礎知識

A New Era of Investing

2023年12月27日(水)18時20分
加谷珪一(経済評論家)

231205p20_HKI_04.jpg

「資産所得倍増」を掲げる岸田政権は来年から新NISAをスタートさせる EUGENE HOSHIKOーPOOL/REUTERS

一方、既に年金をもらい始めている年齢の場合、そこから30年以上の長期投資というのは想定しにくい。退職金などまとまった資金がある人は、まずはその資金を失わないようにすることを最優先すべきだろう。結果的に債券などの比率が高い投資信託あたりが有力な選択肢となる。40代の人はその中間ということになるが、今後は生涯労働が大原則となるので、どちらかといえば若年層に近い形で、30年程度の長期を視野に株式中心に運用するのがよいだろう。

株式を長期保有し、値上がり益だけでなく配当益も狙うということになると大事になってくるのが利益や配当にかかる税金である。2024年から新しいNISAがスタートする予定だが、新NISAには従来型NISAにはない極めて大きな特徴がある。それは非課税の期間が無期限になったことである。

従来型NISAでは、非課税期間が最大で20年だったが、新制度はその制限が撤廃された。将来を予測することは理論的に不可能なので、非課税期間があらかじめ設定されていることは、売却の判断に余分なバイアスをかけることになる。非課税期間が無制限となり、かつ年間の投資上限額も240万円(成長投資枠)に拡大されたので、長期の積立投資にはうってつけの制度といえる。手数料が無料化されたネット証券でNISAの口座を開けばリーズナブルに長期投資を実践できるだろう。

◇ ◇ ◇


用語解説(1)

インフレ、デフレ

物価が上がり続けるインフレーションと、物価が下がり続けるデフレーションの略。物価が上がるということは、同じ額面のお金の価値が下がるということでもある。日本ではバブル崩壊後の1990年代半ばから、長くデフレが続いてきた。

用語解説(2)

GPIF

年金保険料として集められたお金(公的年金積立金)を厚生労働省から預かり、国内外の債券・株式などで運用する世界最大級の機関投資家。積立金は年金給付の原資となるので、リスクを抑えながら一定の収益を上げることが求められる。

用語解説(3)

積立投資

毎月、決まった金額で決まった金融商品を購入し続ける投資の方法。短期的な相場の上がり下がりというリスクを軽減できる、1回ごとの投資額を少額に抑えられるなどのメリットがあるため、初心者でも始めやすいとされる。

用語解説(4)

投資信託とETF

投資信託の中で、日経平均など株価指数に連動することを目指すものをインデックスファンドと呼ぶ。また東京証券取引所などに上場している投資信託がETF。投資信託と違いリアルタイムで値動きし、いつでも売買できる株式に近い特徴も持つ。

用語解説(5)

REIT

多くの投資家から集めた資金で不動産に投資を行い、そこで得られた賃料などの利益を投資家に分配する金融商品。実際に不動産を所有するのとは違い、少額から投資が可能で、プロの手による分散投資でリスクを抑えることができる。

用語解説(6)

ポートフォリオ

投資では、株式や投資信託などの金融商品の具体的な組み合わせを指す。ポートフォリオを組む際は、どの程度の利回りを目指すか、どれくらいリスクを許容するかなどの方針に応じて、どの銘柄を何%程度保有するかを選択する。

20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を

ワールド

米関税措置、WTO協定との整合性に懸念=外務省幹部
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中