「気候変動」対策で、ブルーカラー労働者は置き去りに? 米自動車大手ストから見える「真実」とは
Should Autoworkers Fear Electric Cars?
だから20年大統領選のとき、バイデンが、労働者にとって「公正な(エネルギー)シフト」を実現すると繰り返し約束しても、労働者たちの反応は鈍かったのだ。気候変動対策を推進したいが、選挙のカギを握る労働者の支持を得にくいことは、民主党にとって長年頭の痛い問題だった。
16年大統領選では、民主党指名候補だったヒラリー・クリントンの、「多くの炭鉱労働者と炭鉱業者を廃業に追い込む」という失言が、対立候補のドナルド・トランプに徹底的に利用された。これに先立ちバラク・オバマ大統領が掲げたクリーンパワープランも「石炭との戦争」だと曲解され、大きな批判を浴びた。
こうした攻撃は、気候変動対策の投資を通じて、化石燃料産業の労働者のスキルとノウハウをクリーンエネルギー開発に生かすというオバマのメッセージに影を落とした。
バイデン政権の気候変動・社会保障歳出法案「ビルド・バック・ベター(より良い再建)」は、EV関連の投資を後押しするものでもある。
労働者と誠実に交渉することを促す
しかし、21年11月に民主党のジョー・マンチン上院議員がEV購入補助金をめぐり、組合労働者が働く工場で生産されたEVに税額控除を4500ドル上乗せするという優遇案に反対を表明。この仕組みはUAWとGMが支持していたにもかかわらず、将来の気候変動対策法案からも事実上、除外されるだろう。
もっとも、法案で優遇される対象は、基本的にビッグスリーが国内で生産するEVだけだった。マンチンが主張したように、このような特典を国内最大手メーカーの顧客に限定することは反競争的要素になりかねない。
一方で、こうした優遇策がより多くの自動車メーカーに対し、組織化された労働者と誠実に交渉することを促すという見方もできる。また、「組合労働者による生産」が、コスト減、そして自動車購入者の負担減につながり、ビッグスリーの売り上げ拡大につながったかもしれない。
EVに懐疑的とされるトヨタを含む反組合的な自動車メーカーから働きかけを受けたマンチンの反対により、修正案のクリーンテクノロジー関連支出に、労働組合に関する基準は適用されなかった。そして今、マンチンの地元ウェストバージニア州でも、GMの労働者がUAWのピケに参加している。
このようにUAWのストライキを取り巻く政治的メッセージには、労働者と気候変動問題の衝突という構図が再び浮かび上がっている。