最新記事
電気自動車

「気候変動」対策で、ブルーカラー労働者は置き去りに? 米自動車大手ストから見える「真実」とは

Should Autoworkers Fear Electric Cars?

2023年10月6日(金)19時15分
ニティシュ・パーワ(スレート誌ライター)

だから20年大統領選のとき、バイデンが、労働者にとって「公正な(エネルギー)シフト」を実現すると繰り返し約束しても、労働者たちの反応は鈍かったのだ。気候変動対策を推進したいが、選挙のカギを握る労働者の支持を得にくいことは、民主党にとって長年頭の痛い問題だった。

16年大統領選では、民主党指名候補だったヒラリー・クリントンの、「多くの炭鉱労働者と炭鉱業者を廃業に追い込む」という失言が、対立候補のドナルド・トランプに徹底的に利用された。これに先立ちバラク・オバマ大統領が掲げたクリーンパワープランも「石炭との戦争」だと曲解され、大きな批判を浴びた。

こうした攻撃は、気候変動対策の投資を通じて、化石燃料産業の労働者のスキルとノウハウをクリーンエネルギー開発に生かすというオバマのメッセージに影を落とした。

バイデン政権の気候変動・社会保障歳出法案「ビルド・バック・ベター(より良い再建)」は、EV関連の投資を後押しするものでもある。

労働者と誠実に交渉することを促す

しかし、21年11月に民主党のジョー・マンチン上院議員がEV購入補助金をめぐり、組合労働者が働く工場で生産されたEVに税額控除を4500ドル上乗せするという優遇案に反対を表明。この仕組みはUAWとGMが支持していたにもかかわらず、将来の気候変動対策法案からも事実上、除外されるだろう。

もっとも、法案で優遇される対象は、基本的にビッグスリーが国内で生産するEVだけだった。マンチンが主張したように、このような特典を国内最大手メーカーの顧客に限定することは反競争的要素になりかねない。

一方で、こうした優遇策がより多くの自動車メーカーに対し、組織化された労働者と誠実に交渉することを促すという見方もできる。また、「組合労働者による生産」が、コスト減、そして自動車購入者の負担減につながり、ビッグスリーの売り上げ拡大につながったかもしれない。

EVに懐疑的とされるトヨタを含む反組合的な自動車メーカーから働きかけを受けたマンチンの反対により、修正案のクリーンテクノロジー関連支出に、労働組合に関する基準は適用されなかった。そして今、マンチンの地元ウェストバージニア州でも、GMの労働者がUAWのピケに参加している。

このようにUAWのストライキを取り巻く政治的メッセージには、労働者と気候変動問題の衝突という構図が再び浮かび上がっている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

原油高で需要減退リスク、大幅利下げ支持の公算=ミラ

ワールド

アイスランド、国民投票8月実施へ EU加盟交渉再開

ビジネス

米航空会社、燃料費高騰が重しに 交戦長期化なら業績

ビジネス

米FRB、雇用と物価の板挟み 労働市場悪化と原油高
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だったはずの中国が、不気味なまでに静かな理由
  • 2
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示さない
  • 3
    10歳少女がライオンに激しく襲われる...中国の動物園で撮影された「恐怖の瞬間」映像にネット震撼
  • 4
    「みんな一斉に手を挙げて...」中国の航空会社のフラ…
  • 5
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 6
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 7
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 8
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 9
    「ハリポタ俳優で終わりたくない」...ハリー・メリン…
  • 10
    【イラン戦争で中東再編へ】トランプを止めるのは湾…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 10
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中