最新記事
ビジネス

「銀行らしさ」からどう脱却するか...堅い銀行でイノベーションを実現させた「みんなの銀行」に学ぶ

2023年6月6日(火)18時09分
flier編集部

230603fl_fie02.jpg

デジタルを起点に既存の銀行をRe-design(再設計)し、Re-define(再定義)することで、銀行の三大機能(金融仲介・信用創造・決済)を、新・三大機能(価値仲介、信頼創造、決裁)に進化させたプロダクトや体験価値を提供していく。こうしたビジョンを実現することで、金融業界に大きなインパクトをもたらせると考えています。

デザイナーと銀行員、健全な衝突をどう乗り越えたのか?

──ご著書には、ビジネスの進め方、ブランディング、組織づくりなど5つの分野をベースに、どのようにイノベーションのジレンマを乗り越えたのかが書かれていますが、特に印象的なエピソードについて教えていただけますか。

デザイナーと銀行員というように、異なる価値観をもったメンバー同士の健全な衝突をいかに乗り越え、サービスの進化につなげていくか、というところです。普通の銀行は99%が銀行員で占められており、デザインやシステム開発などの多くをアウトソースしています。ですが、みんなの銀行は、銀行員だけでなくデザイナー、エンジニア、マーケター、データサイエンティストなど多様なメンバーから構成されています。

私たちがめざす「銀行らしさからの脱却」に向けて協働するものの、ベクトルを同じ方向に向けることは難しい場面が多々あります。たとえば、みんなの銀行は、唯一の顧客接点であるスマホアプリにはとことんこだわってきました。デザイナーは少しでもUIをシンプルにするため、何を省けるか、「引き算の思考」をする。これに対し、銀行員は法令を守りリスクを減らすために、「足し算の思考」をします。両者の議論は今も白熱することが多々あります。

──そうした衝突や対立をどうやって乗り越えてきたのでしょうか。

私は両者の考えを聞いて意思決定する立場にありますが、そのときに意識するのは「サービスの均衡がとれているか」。デザイナーによる、機能や文言をできるだけそぎ落としてシンプルにしようとする意志。そして、銀行員による、銀行として守らなければならないところは守ろうとする意志。両者の絶妙のバランスをとることが、最小限の部分的な機能にフォーカスしたFinTechとも違った、みんなの銀行ならではの価値だと捉えています。

私自身は新しいことに挑戦するのが好きなので、デザイナーの新しい提案に「いいんじゃない」ということが多い。ですが、銀行員たちが体を張って「この機能や規約だけは銀行としての信頼やクオリティを担保するためにも残したほうがいい」などと進言してくれることがあります。そのときは銀行のスペシャリストたちが蓄積してきた知見やノウハウを尊重するようにしています。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、ゼロ金利を維持 米関税引き下げで経済見

ワールド

ノーベル平和賞のマチャド氏、「ベネズエラに賞持ち帰

ワールド

ドイツ経済、低成長続く見通し 財政拡大でも勢い限定

ビジネス

IEA 、来年の石油供給過剰の予測を下方修正
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 8
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 9
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中