最新記事
インタビュー

「教養=知識量」の勘違い──AIに仕事を奪われない「転の思考」を身に着ける読書術とは

2023年5月1日(月)08時05分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
読書

Lolostock-shutterstock

<知識量を教養というのであれば、誰もGoogleには敵わない。本当の教養とは「土を耕すこと」と同じ。外部の空気があたって自分が変わり、「いい人」になるためには>

「本は百冊あればいい」と新刊『百冊で耕す 〈自由に、なる〉ための読書術』(CCCメディアハウス)で述べるのは、朝日新聞の編集委員で稀代の読書家でもある、近藤康太郎氏。読書を日常に組み込み、本物の教養を培うコツについて、近藤氏に聞く。

◇ ◇ ◇

──動画で効率よく知識を吸収する「ファスト教養」について、どう思いますか?

「教養」という言葉は単純に「知識」という意味で使われがちです。知識が多い人のことを教養がある人だという。しかし、私にとっては知識と教養は別物です。

映画のストーリーを要約した「ファスト映画」など、「ファスト何某」は教養の入り口にはなるかもしれません。しかし、動画や音声、テレビ番組は答えや結論があらかじめ用意されたメディアです。

それに対して、本は必ずしも結論を得るためのメディアではありません。ゴールに到着するためではなくスタート地点に立つために読む。答えを見つけるためでなく、自分だけの問いを立てられるようになるために本を読む。それが本を読む意味です。

誰かが答えを用意した動画を大量に視聴したところで、本物の教養人にはなり得ないでしょう。もし知識量を誇って、それを教養というのであれば、世界でいちばんの教養人はGoogleということになります。

──多忙な現代人であってもビジネス書や自己啓発書などの需要はいまだ大きいです。大変な読書家の近藤さんにとって、読書は仕事にどう役立っていますか?

もしかすると「本を読むことで知識が得られ、取材での雑談力が上がり、アウトプットが変わる」という答えを想定されていたかもしれませんが、そうではありません。私にとっていちばんの実益は「作家/思想家の思考の構造」で考えられるようになったことです。

私は仕事の資料として使う以外、ビジネス書や自己啓発書はほとんど読みません。読むのは古典です。なぜなら古典は1、2年で消えるようなものではなく、時代を超えて読み継がれてきたという実績、普遍性があるから。

古典となり得た一流の知識人に憑依され、その思考法をなぞって自分の考えを深めることができるようになる。これはライターに限らず、どんな仕事をしている人にとっても助けとなる、読書の大きな現世御利益です。

インタビュー
現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ「日本のお笑い」に挑むのか?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

グーグル、EUが独禁法調査へ AI学習のコンテンツ

ワールド

トランプ氏支持率41%に上昇、共和党員が生活費対応

ビジネス

イタリア、中銀の独立性に影響なしとECBに説明へ 

ワールド

ジャカルタの7階建てビルで火災、20人死亡 日系企
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 9
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 10
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中