最新記事
BOOKS

究極の遅読は「写経」──人生を豊かにする「遅読」4つのテクニックとは?

2023年3月8日(水)09時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
写経

Usa.Pin-shutterstock

<読書家のなかで絶えない、「速読か、遅読か」論争。名文家で知られる、朝日新聞編集委員の近藤康太郎氏が「どちらも」という読書術とは?>

巷にはあまたの読書法が存在する。「買うべきか、借りるべきか」、「紙の本か、電子書籍か」、「積ん読は良いのか、悪いのか」など数ある中で、最たる例が「速読か、遅読か」論争であろう。

朝日新聞の名文記者として知られ、文章術のベストセラー『三行で撃つ 〈善く、生きる〉ための文章塾』の著者でもある、近藤康太郎氏。彼は日本文学や海外文学の古典、自然科学、社会科学、そして詩歌にいたるまで、博覧強記の読書家でもある。

その近藤氏の「速読か、遅読か」ではないと述べる、読書術とは? 新刊『百冊で耕す 〈自由に、なる〉ための読書術』(CCCメディアハウス)より「第1章 終わりなき論争:速読の技術/遅読の作法」を抜粋する。

◇ ◇ ◇

【B面】遅読の作法──空気を味わうためのテクニック

「芥川は速読しかできなかった。だから死んだ」

一瞬たじろぐ辛口の評は、『風立ちぬ』の作家・堀辰雄の言である。速読が死の一因であったかどうかはともかく、百冊読書家も「速読しかできない」のではよろしくない。

一日に三冊もの本を読む人間を、世間では読書家というらしいが、本当のところをいえば、三度、四度と読みかえすことができる本を、一冊でも多くもっているひとこそ、言葉の正しい意味での読書家である。  
 ──同前

まじめに書かれた本は、速読を峻拒(しゅんきょ)する。わたしは実用書や、取材で使う資料としての書籍は速読するが、たとえば小説を速読することは、まずない。

速読するくらいなら、小説など読まない。小説とは、あらすじを追うものではない。あらすじなんか、どうでもいい。小説とは、作品に流れる空気を味わうものだ。空気は、速読すると風に飛ぶ。

書くことを職業にしている者にしては、わたしは、読むのがかなり遅い。日本語の小説だと1分で1ページ。前述したように15分単位で1冊の本を読んでいるので、15ページ。社会科学系の新書ではもう少し速くなり、15分で20ページほど。難しい思想書ではぐっと遅くなる。15分で10ページ程度しか読めない。

英語本になるとさらに遅くなり、日本語の半分か。スペイン語の本ならば15分で1、2ページしか読めない。

それで満足しているわけではない。しかし、世に言う速読トレーニングを受講して、速く読めるようになりたいとも思わない。目的が違うのだ。



百冊で耕す 〈自由に、なる〉ための読書術
 近藤康太郎[著]
 CCCメディアハウス[刊]

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

最近の急速なウォン安・円安、深刻な懸念共有=日韓対

ワールド

米戦略石油備蓄の第1弾、来週末までに供給 8600

ビジネス

日立とGEベルノバ、東南アジアで小型モジュール炉導

ワールド

米商務省、AI半導体輸出の新規則案を撤回 公表から
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革命をもたらす「新世代ドローン」とは?
  • 3
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈祷」を中国がミーム化...パロディ動画が拡散中
  • 4
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 5
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 6
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 7
    ホルムズ封鎖で中国動く、イランと直接協議へ
  • 8
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 8
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中