遅刻と居眠りの多い「問題社員」は、病気の可能性も。どうすれば?【産業医が解説】
例1)「遅刻魔である」→「週に〇回遅刻をする。遅れてくる時間は1回につき〇分から〇分程度である」
例2)「仕事中によく居眠りをしている」→「午後1~3時の間作業の手が止まり、席に座ったまま寝ているということが、今週は〇回観察された」
そして、改善のための指導を行う時も、具体的な数値目標を用いながら、改善できたかどうかが客観的にわかるようにしましょう。また、問題の根本的な原因がある場合、単に注意指導を繰り返すだけでは改善は難しいものです。そこで役に立つのが、"疾病性"という言葉です。
■疾病性とは
疾病性とは、本人が抱える症状及び周囲が感じる病的感のことです。「体調が悪くて......」という本人の訴えがある場合、事例性だけを取り上げて、注意指導を繰り返す・処分をする前に、疾病性の評価が必要です。たとえ、ご本人からの訴えがなくても、はたから見て元気がない・遅刻をする・居眠りをするという状況があれば、「医学的な原因はないのだろうか?」という視点で考えることは欠かせません。
遅刻や仕事中の居眠りが起きている背景として、以下のような様々な背景が考えられます。
・小さなお子さんがいて、夜鳴きで起こされて睡眠不足である
・子育てや介護で疲労が蓄積している
・寝つきが悪い、眠りが浅いなどの睡眠の問題がある
・ゲームやインターネットに費やす時間が多く、睡眠時間が削られている
・睡眠のリズムに関わる病気がある
・突然寝てしまうという症状が出る病気がある
もちろん、経営者やマネージャーの方が医学的な判断をする必要はありません。そこで頼れるのが、"産業医"の存在です。指導や処分の前に、産業医による疾病性の評価をおこないましょう。遅刻や居眠りの背景に疾病の影響があり、治療により症状が改善すれば、遅刻や居眠りがなくなった、ということはよくあります。
ルールに則った公平・公正な対応を
産業医として、従業員の方の面談を行い、遅刻や居眠りが問題ではないかと指摘をすると、「他にも遅刻や居眠りをする人はいます」というご意見をいただくことがあります。
会社からすると、仕事ができて業務をたくさん抱えているベテランのBさんの遅刻は許容するけれども、新入社員のAさんの遅刻は許容できない、というような言い分があるかもしれません。ただ、Aさんの遅刻には厳しく対応するのに、Bさんには注意しない、ということが起きると、従業員間の不満や、会社に対する信頼の喪失につながります。色々な事情があるにせよ、客観的な事実と会社のルールに沿って対応しましょう。