最良のフォーメーションとは? サッカーに学ぶ「人事戦略の極意」8カ条

WHAT CEOS CAN LEARN FROM THE WORLD CUP

2023年1月12日(木)14時45分
ボリス・グロイスバーグ(ハーバード・ビジネススクール経営学教授)、サーシャ・シュミット(WHUオットー・バイスハイム経営大学院スポーツ経営センター長)、アブヒジット・ナイク(ファンドフィーナ社リスク・データ責任者)、ハリー・クルーガー(バイエルン・ミュンヘン戦略・事業開発担当)

230117p40_WCEO_03.jpg

ベンゲル元監督は20年を超える長期政権という偉業を成し遂げたが STUART MACFARLANEーARSENAL FC/GETTY IMAGES

■重責を担う監督

どんな戦術を使い、どんな陣容で戦うかの決断を担っているのが監督だ。優れた監督はコミュニケーション力に秀でていて、選手たちのモチベーションを高める達人でもある。前述のクロップのように、サッカーにおけるイノベーションの源泉と呼ぶべき監督もいる。

監督の仕事はサッカー界で最も厳しいと言っていいだろうし、その厳しさが増すばかりなのは監督の交代が多くなっていることからもうかがえる。

イングランドのプレミアリーグにおける監督の平均在任期間は、1992年の3.5年から16年には1.3年に縮まっている。在任20年を超えたアーセナルのアーセン・ベンゲル元監督やマンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソン元監督のすごさが分かる。

■ドリームチームの作り方

私たちは最新の解析技法を用いてチームを設計すべく、ドイツのプロサッカー・ブンデスリーガの1部リーグの13~14年シーズンから18~19年シーズンまでの6シーズンの勝敗や引き分けを含むデータを収集・分析し、各ポジションの重要性を評価した。

データセットには26の説明変数のほか、25のポジションや監督も変数に含めた。「ランダムフォレスト」と呼ばれる機械学習のアルゴリズムを用いて、選手などのポジションやチームを入れ替えたときの各変数の貢献度の変化を「平均正解率減少量(MDA)」という重要度を割り出す手法で調べた。MDAが大きい変数ほど、重要度は高いということがいえる。

■分析から見た重要ポジション

私たちは分析結果から最終的なモデルを2つ、つまり引き分けがあるモデルとないモデルをつくり、それぞれで各ポジションの相対的な貢献度を計算した。それぞれのモデルにおける貢献度の高い5つのポジション変数については下の表を参照していただきたい。

230117p40WCEOfive.jpg

この結果から分かるのは、ディフェンダーとゴールキーパーが最も重要なポジションということだ。表にあるとおり、それぞれのモデルの上位3つを、また両方のモデルを合わせた10の重要ポジションのうち7つをディフェンダーとゴールキーパーが占めている。

また、左右のサイドバックとゴールキーパー、そして左サイドハーフの4つのポジションは、どちらのモデルでもランクインしている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

韓国クーパン、顧客情報大量流出で11.8億ドルの補

ワールド

尹前大統領の妻、金品見返りに国政介入 韓国特別検が

ビジネス

日経平均は反落、需給面での売りが重し 次第にもみ合

ビジネス

午後3時のドルは156円前半、年末年始の円先安観も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中